
シャンソンシゲル。一度聞いたらなかなか忘れられない名前は、GELLERSのドラマー新町慎悟のソロ・プロジェクトである。ドラムやパーカッション、ギター、鍵盤などの演奏をすべて担当し、4トラックMTRによる多重録音で制作される作品『#1DAD』。自身の声を加工して、声を”唄”ではなく”音”のひとつにしたりノイズを加えるなど、非常に実験的なサウンドでありながら、どこか懐かしい温かさや、音作りに対する純粋な楽しさを感じる。それは一体何故なのだろうか。話を伺った。
インタビュー & 文 : 井上沙織
INTERVIEW
声とノイズでどこまで出来るのかと思って始めた
—シャンソンシゲルというアーティスト名はどのようにして付けたんですか?
シャンソンシゲル(以下S) : GELLERSのライブで映像を作ったときに、なんとなく”東芝シゲル”っていう名前で発表したんです。それが頭のどこかに残っていて。それからソロをやるときに、歌といえばシャンソンだよなあと思って今の名前にしました。
—どんな音楽がお好きなんでしょうか?最近聴いているものなどがあれば教えてください。
S : 特にこれといって決まったものがあるわけではないんですが、最近だと60〜70年代のロックが多いですかね。
—GELLERSをはじめ、様々な活動をされていますね。ソロを始めたいきさつは何だったのでしょうか。
S : GELLERSの為に作った曲の 中からボツになったものをリアレンジしたのがきっかけです。もともとは制限をかけて始めたんです。声とノイズでどこまで出来るのかと思って。そこから広がっていって今の形になりました。それを友達に聴かせたらMySpaceに上げてくれて。そこからライブとかにも誘われるようになっていって今に至る感じですね。

—ご自身はトクマルシューゴのサポートなどもされていますが、サポートを入れようとは考えなかったのでしょうか?
S : そもそもがボツ曲なので、特に誰かを誘おうとかは考えなかったです。でも別に一人でやろうと決めて作ったわけでもなく、ただ宅録をした、というだけですね。ライブはギターでの弾き語りなので、ドラムに入ってもらったり、バンド形態でやったりしてます。
—今作『#1DAD』は17曲収録されていてボリュームがありますが、アルバム制作は集中的に行われたのでしょうか?
S : 曲作りは集中してというより、日常的に作っています。特に行き詰まったりすることもなくて。行き詰まった時はその曲を廃棄しちゃいます。本当はもっと曲数があったんですけど、多すぎるかなと思って減らしました。
—8曲目の「flick beat」のメロディ・ラインの音がすごく印象的だったのですが、何の楽器なのでしょうか?
S : あれは声です。テープで録った声を切ったり伸ばしたりして作りました。

—新町さんの音楽は、どこか北欧っぽさがあったり、ノイズが入っていたりするのにも関わらず、どこか温かさを感じました。
S : 外国っぽいと言われることはあるけど、地域限定されたのは初めてですね。温度感があるのはきっとデジタルじゃないからでしょうね。テープで録ったりしてるし、ノイズも丸みがあったりする。そういうのが好きなんですよね。
—ご自身の作品はもちろん、トクマルシューゴやひょうたんなどのアート・ワークも手掛けていますが、作品づくりはいつ頃から始められたんですか?
S : 絵を描いたりするのは昔からやってたんですけど、ちゃんと人前に発表するようになったのはトクマルの7インチ『Vista』のジャケットを作った頃からですね。
—好きな芸術家などはいますか?
S : いっぱいいます。でも大体名前を覚えていない人が多いです…。あとはクレーとか、有名な人も好きですね。
—楽曲とアート・ワーク、どちらもコラージュ的ですよね。
S : 切り貼りする作業が好きなんですよ。そういう意味で双方に通じるものがあるのかもしれないです。

LIVE SCHEDULE
- 2月14日(土)@下北沢 WEDGE
- 2月15日(日)@西千葉 cafe STAND
- 2月18日(水)@渋谷o-nest
LINK
シャンソンシゲル website http://chansonsigeru.web.fc2.com/
シャンソンシゲル MySpace http://www.myspace.com/chansonsigeru
レーベル website http://www.artuniongroup.co.jp/moamoo/
シャンソンシゲル制作の素敵な映像 (parachute / トクマルシューゴ) http://www.youtube.com/watch?v=Li_nc8ED6qI

シャンソンシゲル
1980年、東京都生まれ。中学時代、同級生と組んだバンドのドラマーとして活動を始める。のちにバンドはGELLERSと名前を変え、2007年に"MAP"主催の"COMPARE NOTES RECORDS"からファースト・アルバム『GELLERS』をリリース。同年、フジロック・フェスティバルに出演する。また同じくGELLERSの一員であるトクマルシューゴのライブをトイ・パーカッション奏者としてサポート。現在は"トクマルシューゴ&ザ・マジックバンド"に参加している。ソロ名義では、ドラムやパーカッション、ギター、鍵盤などの演奏のほか、自身の声、ノイズなどすべての音を担当し、4トラックMTRによる多重録音にて作品を大量に制作。その独特の感性はイラストレーションやアニメーションにおいても発揮されており、各方面から注目を集めている。
