
日本のバンドの多くが欧米に憧れ、後姿を追っている。「トレイン・スポッティング」など数多くのイギリスのカルチャー映画が日本で支持されているのも、背景には憧れがあるからではないだろうか。そんな中、ロンドンで最も有名なコンサート・ホールの名前を名乗るバンドがいる。The Brixon Academyだ。彼らは7〜80年代のイギリスにおけるクラブ・カルチャーに影響を受け、ニュー・オーダーをはじめとするニュー・ウェイヴ・サウンドを脈々と引き継いでいる。デビューE.P.『TBA』はシンセサイザーを多用したダンサブルなエレクトロ・ポップ・ナンバーで、抑揚のあるメロディが耳に残る。彼らはバンド名、サウンド共にイギリスの影響を大きく受けているのは確かだが、ただのリバイバル・バンドではないようだ。自分たちを含め、現在のミュージック・シーンをどう捉えているのだろうか。
インタビュー&文 : 井上沙織
INTERVIEW
好きなら掘って聴くんじゃないかな
—『TBA』、とてもメロディアスな作品ですね。ディスコ・パンク色の強い前作『Single』とはサウンドが全然違います。
『Single』は、ギターはジャキジャキで、ボーカルは叫んだりしていますからね(笑) 『TBA』ではポップっていうのを常に意識していたので、すごくとっつきやすくなっていると思います。実はこれ、一昨年の12月に出来た曲で、今現在のサウンドとはまた ちょっと違う。今は更にニュー・ロマンティックとかエレクトロ寄りですね。分かりやすいところで言うとデュラン・デュランみたいな。
—バンド結成以降、サウンドはどのように変化したのですか?
最初はガレージ・ロックをやっていました。そこからジョイ・ディヴィジョンみたいなポスト・パンクになって、ノー・ウェイヴとかやって、ニュー・ウェイヴになったかな。メンバーの音楽の好みはバラバラなんですけど、そんな中で4人が共通して好きなのはニュー・ウェイヴとかニュー・ロマンティックとかエレクトロなんですよね。
—ここ数年、ニュー・ウェイヴやエレクトロなどのダンス・ミュージックの勢いってすごいですよね。どう感じていますか?
僕らの音楽は若い人の食いつきが良くなかった。彼らって2000年世代のラプチャーとか、日本ならテレフォンズ等を聴いてきた人が多いと思うんです。でも僕らが影響を受けたのって、70〜80年代の音楽からなんですよね。だから僕らのスカスカ感は、下手したらダサく聴こえるんじゃないかな(笑) 逆に30〜40代の人や外国人は、ニュー・オーダーとかジョイ・ディヴィジョンを通っているから反応が良かったりする。その部分で他のバンドとちょっと違うかもしれない。
—若い層のリスナーに、自分達のルーツまでたどりついて欲しいと思いますか?
好きなら掘って聴くんじゃない? 位にしか思っていないですね。僕らもインタビューとかでバンバンいろんなバンドの名前を言ったりしてるんで、敏感な人は聴くんじゃないかなあ。
「僕ら仲良くやってます! 」みたいな見せ方はしなくていい

—「DISCO! DISCO! DISCO!」というクラブ・イベントを主催されていますが、同世代や下の世代を盛り上げていきたいという考えはありますか?
70年代のロンドンとかで起こったクラブ・ムーヴメントと同じように、日本にも良いバンドがいるっていうことを示したくて始めました。でも自主的に盛り上げていこう、っていう考えではなくて、僕らが起爆剤となって、勝手に盛り上がればいいと思ってやっています。例えばクラブ・シーンの人って、ライブ・ハウスとかバンドのイベントに行かない。だから、クラブでそういう人たちの前でライブをすることで「バンドでも踊れるじゃん」って思ってもらえるきっかけになればいい。今とりわけダンス・バンドが多い中で、本当にかっこいいものをみつけてくれればいいなと思っています。あと僕ら「acute」っていう企画もやっているんです。
—「DISCO! DISCO! DISCO!」とはまた違ったカラーのイベントなのでしょうか?
そうですね。「acute」はもう少し尖ったことをやりたいと思って始めました。好きな人しか呼ばない。DJも幅広くかける人じゃなくて、エレクトロしかかけないとか、ビートもないダーティーな曲しかかけない、みたいな人を呼んだり。だから開催ペースはかなりゆっくりなんですけど(笑)
—その2つのイベントの客層は、かぶっているのでしょうか?
かぶっていないですね。「acute」はアンダーグラウンドから僕らのエゴの塊をぶつけていく場で、「DISCO! DISCO! DISCO!」は表舞台から発信していく場。普段クラブ・イベントに行かない人でも、僕らみたいなバンドが「DISCO! DISCO! DISCO!」なんていうポップな名前で開催したらきてくれるんじゃないかなと思ってやっています。
—「Kings(The Brixton Academy,the telephones,THE BAWDIES,QUATTRO,PILLS EMPIREの5バンドと、クラブ・イベント“FREE THROW”のDJ陣による集団)」でもイベントをされていますが、こちらはバンドとして参加するという意識なのでしょうか?
そうですね。普段あれだけのお客さんの前でやる機会もないので、いいチャンスだと思っています。多分「kings」に来てくれるお客さんと僕らって、聴いてる音楽が違うと思うんです。そこでバーンとやったときに、どのような反応が返ってくるのかが楽しみなんです。
—イベントを通して繋がった人と一緒にムーヴメントを広げていこうとは思いますか?
自然とそうなっています。カルチャーは日本全国に各々点在していて、勝手に繋がっていく。だから「僕ら仲良くやってます! 」みたいな見せ方はしなくていいと思う。ニュー・オーダーとか、当時のニュー・ウェイヴもそうだと思うんですよね。皆こぞって「こういう音楽やろうぜ」って始めたんじゃなくて、自然発生的にああいう音のバンドがいっぱい出てきた。じわじわやっていくうちに周りの耳が慣れてきて、結果としてムーヴメントになると思うんです。
—アルバム制作の予定はあるのでしょうか?
今年中に出せたらいいなって話はしています。僕ら今までリアルタイムな音源を出せていないので、現状を記録してリリースしたいと思っていますね。リアルタイムで海外と対等な音を出すってことは、向こうでやりたいっていう意思表示でもあるし、勝負できるっていう自信にもなりますからね。やっぱり自分達が一番かっこいいと思ったことを、日本のバンドだけじゃなく、海外のバンドにやられていたら悔しいじゃないですか。
—海外と戦えるようになりたいと。
日本のシーンは攻めの姿勢がない。海外があっての日本、っていう図式が基本になっちゃっいるのが嫌ですね。もっとこっち発信で海外のレーベルからオファーがくるようなバンドがいてもいいと思うんです。エスカレーター・レコーズのアバロンとかそうですよね。日本でも新しいことやっているバンドはたくさんいる。それがもっと広がればミュージック・シーンが面白くなるんじゃないかなって思っています。

LIVE SCHEDULE
TBA Release party
- 4/18 (土) @Shinjuku MARZ
DJ / oi oi oi on!!! / Hideki kaji
VJ / #9
Kings Vol.2
- 5/6 (水・祝) @Ebisu LIQUIDROOM
DJ / FREE THROW
VJ / #9
LINK
- The Brixton Academy website : http://the-brixton-academy.com/
- The Brixton Academy myspace : http://www.myspace.com/thebrixtonacademy
- #9 website : http://season9.xxxxxxxx.jp/
- #9 blog : http://season-log.jugem.jp/

The Brixton Academy
80年代のニュー・ウェイヴ / マンチェスター・サウンド、海外の最新のインディー・サウンドの洗礼を受け、そこに東京のインディー・カルチャーを絶妙にミックスしたサウンドやパフォーマンスで、現在を注目を集めている。

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