
叙情を得た変拍子
アメリカ・サクラメント出身の3人組ポスト・ハードコア、アヴァン・マス・ロック・バンドtera melos。 BATTLESなどに代表されるマス・ロックな楽曲アプローチとBLACK FLAGなどのハードコアをミックスしたサウンドは、輸入盤しか流通していなかったにも関わらず、日本国内でも中毒者を次々と生み出してきた。昨年、待望の日本盤『Drugs/Compex』をリリースし、来日ツアーに加え、LITEやAdebisi Shankらと共に「Parabolica Jam'09」で東名阪を回った彼らは、前のめりでアクロバティックな演奏を繰り広げ、会場を熱狂させた。とりわけ、フリー・セッションでの圧倒的なテクニックとパフォーマンスは圧巻で、バンドの強固さを垣間見ることができた。心底楽しそうにセッションをする姿がとても印象的だったことを覚えている。
彼らが、セカンド・フル・アルバム『Patagonian Rats』をリリースした。再生ボタンを押した瞬間に流れてきたのは、賛美歌のようなメロディと穏やかなヴォーカル。ハードコアやマス・ロックの力強さとは無縁の、叙情的なサウンドだった。本作では、これまでのテクニカルなサウンドに加え、エレクトロニック・フォークのアプローチが取り入れられている。またセッションがメインのインストゥルメンタルの楽曲が多かったのに対し、今回は全曲でヴォーカルを入れるなど、新たなサウンド・スケープを確立させている。最初はアプローチの変化にただ驚くばかりだったが、聴き進めてみれば、曲の振り幅と共に、バンドのダイナミクスも以前より大きくなっていることがわかる。彼らは盟友LITEとのツアーを経て、新たな領域へ足を踏み入れたようだ。
10月には、彼らの再来日が決定している。ライブ・バンドとして変化し続ける3人組を、その目で、耳で、確認してほしい。(text by 井上沙織)

Parabolica Jam'09
LITEの井澤惇が主宰するレーベル、Parabolica Recordsが昨年10月に主催したライブ・イベント「Parabolica JAM’09」の渋谷QUATTRO公演の模様を収録。tera melos、Adebisi Shank、そしてLITEの演奏を、HQD(24bit/48kHzのWAV)で配信。高音質のライヴ音源からは、会場の空気感や音のひとつひとつが突き刺さるように伝わってきます。日欧米3組のアクロバティックな演奏の激突を追体験せよ!
PROFILE
アメリカ・サクラメント出身の3人組ポスト・ハードコア、アヴァン・マス・ロック・バンド。昨年9月に、2007年にアメリカで発売された2nd EP『Drugs to the Dear Youth』のリミックス、リマスター音源と、同じく同年、アメリカの名門レーベルTemporary ResidenceよりリリースされたBy the End of TonightとのSPLIT CD『Complex Full of Phantoms』に収録されたtera melosのリマスター音源を収録した、初の日本盤となる限定盤『Drugs/Compex』をリリース。また昨年10月に東名阪CLUB QUATTROを含む8カ所のJAPAN TOURを行う。BATTLESなどに代表されるマス・ロックな楽曲アプローチとBLACK FLAGなどのハードコアをミックスしたサウンドに、Cap'n JazzやMODEST MOUSEなどの泣き変態エモ的な歌メロが乗り、とにかく独創的なその音楽性は、日本国内でも中毒者を次々生んでいる状況である。