aldo van eyck (アルドファンアイク) のライブには毎回驚かされる。ただし、その驚きの質は毎回異なる。先月ついに届けられた待望の3rdアルバム『das Ding』は、ポストパンクからオルタナ、ジャズ、R&Bまでを混然と放り込んだ、全20曲・71分の大作だった。そのリリースツアー東京公演は、随所に逸脱を孕みながらも、得も言われぬ統一感を感じさせるステージだった。あの一本筋の通りかたは、あらかじめ意図されたものなのか。それとも、バンド自身にとっては「まだ崩し足りていない」途中経過にすぎないのか。今回…
いま、Hammer Head Sharkはめまぐるしい進化の途上にある。2018年、ながいひゆ (Vo/Gt) と福間晴彦 (Dr) を中心に結成した彼らは、メンバーの入れ替わりを経て、現メンバーは太平洋不知火楽団などのサポート経験を持つ後藤旭 (Ba)、自身のバンド・GLASGOWでも活動する藤本栄太 (Gt) という最強の布陣で構成されている。音源はもちろんのこと、とりわけライブに定評のある彼ら。その噂は波紋のように広まり、2024年10月にはカナダ各地を回るツアー〈Next Music From T…
ロックバンド・keinが、次なる地平へと踏み出した。前作『PARADOXON DOLORIS』で強烈な個性を提示した彼らが、メジャー2nd EP『delusional inflammation』でさらにその輪郭を広げる。メンバーそれぞれが、自身のルーツや衝動、そして音楽への矜持をもって“メジャー感”と対峙し、あくまでkeinらしい歪さと美しさを保ったまま、さらにダークでラディカルな世界観を展開している今作。その制作の舞台裏を、眞呼(ボーカル)、玲央(Gt)、aie(ギター)、攸紀(ベース)、Sally(ドラ…
the dadadadysが、結成3年目にして初のCDリリースとなるファースト・アルバム『+天竺』(読み:プラステンジク)をリリース。FRUITYを想起させるパンクからオルタナ、既発曲のリアレンジまで、てんこ盛りの一枚だ。そんな本作には、混沌とした時代を生き抜くために、上も下もわからないままでも前を向いて足を動かしていく──そんなバンドの泥臭い姿勢が色濃く反映されている。冒頭曲“GO jiGOku!!”の「生きては恥晒し (我々は我々だ)」という一節からも、恥をかくことをおそれずに、不恰好でもがむしゃらな…
インディーシーンで着実に実力をつけてきた、2人組バンド、なきごとのメジャー・デビューEP『マジックアワー』が完成した。空が魔法のように染まる一瞬を切り取ったこの作品には、恋の温度差を描く“短夜”(MBSドラマ特区「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる2nd Stage」エンディング主題歌)、愛と創作を重ねた“愛才”(深夜ドラマ「それでも俺は、妻としたい」のオープニング主題歌)、などどの楽曲にも繊細な視点と確かな物語が息づいている。「ポップだけどロックでありたい」。そんなバンドとしての美学が、今作ではよりくっきり…
ゆうらん船が〈カクバリズム〉移籍後初となるアルバム『MY CHEMICAL ROMANCE』をリリースした。『MY 〇〇』3部作の締めくくりであり、同名のバンドも脳裏によぎるタイトルを冠した本作は、DTMを駆使した歪んだノイズの質感や、ディストーションまみれの轟音ギター全開のバンド・サウンド(=ケミカル)と、永井秀和(Pf)の耽美なピアノと情緒的な歌詞が描く物語(=ロマンス)が入り混じった、バンドの新たな指針となる一枚だ。 ...…
結成25周年を迎えたART-SCHOOLが放つミニ・アルバム『1985』は、2003年に発表された『SWAN SONG』を“今”の感覚で再構築するという試みから生まれた作品だ。荒々しさや切実さのなかに、月の光のように静かに射し込む優しさや希望──そんな余韻を纏った本作は、これまでの旅路を振り返ると同時に、新しい景色へと向かう意志に満ちている。そこには、木下理樹(Vo. / Gt.)の創作の核にある“敬意”と“ときめき”が息づいている。自身の感性を決定づけた音楽や映画との出会い、心を奪われたあの瞬間のきらめ…
2000年5月に結成されたロック・バンド、FUNKISTが今年で結成25周年を迎える。OTOTOYではこの記念すべきアニバーサリー・イヤーを祝し、FUNKISTの25年の歩みを振り返る短期連載をスタート。バンドの歴史を3つの時期──2000〜2007年、2008〜2012年、2013〜2025年──に分け、それぞれの時代をメンバーの言葉でたどっていく。 ...…
煩雑な日常を硬質なロック・サウンドで爽快に蹴飛ばしてくれるayutthayaが、ついに宇宙まで飛んでいった!5曲入りの最新EP「epoch」は、曲を追うごとに地球から月へと近づいていくイメージを描いたコンセプト作品。これまで以上に歌詞に感情を反映するようになった太田美音(Vo/Gt)の変化と、楽曲の世界観に呼応し再構築する右田眞(Ba)のアプローチにより、バンドの新たなフェーズへの手応えがにじむ一枚だ。ふたりの視点から、今作に込めた想いを語ってもらった。 ...…
志磨遼平のソロ・プロジェクト、ドレスコーズが、通算10枚目のフルアルバム『†』を2025年5月14日にリリースした。制作の過程は「のっぴきならなくなった」と語られるほど切実で、その背景には、自叙伝『ぼくだけはブルー』の出版をきっかけとした過去の反芻や、それに伴う焦燥感、そして「生まれ変わりたい」という強い衝動が見え隠れする。収録曲「ロックンロール・ベイビーナウ」をはじめ、アルバム全体に散りばめられたロックンロールへの熱い想いとはどういうものだったのか。志磨が"作らずにはいられなかった"という、瑞々しく粒ぞろ…