Nefertitti Avani 「Odyssey」
オハイオを拠点とするシンガー、Nefertitti AvaniがプロデューサーのMisha、Evil Needleと手を組んだコラボEP。愛をテーマに、愛の高揚感だけでなく、陶酔感や中毒性など、影の表情まで掘り下げた1枚だ。もともとソロでも数々の作品をリリースしてきたふたりのプロデューサーだが、歴年のキャリアに裏付けられたプロダクションは、ヒップホップの深みとローファイ特有の揺らぎが絡み合い、ソウルフルなR&Bを形作っている。Nefertitti Avaniの情緒豊かなヴォーカルも見逃せず、その声は作品全体に温かみと色気を加えている。3人の作品的な接点はこれが初めてのようだが、今後のコラボレートにも期待したい。(Cookie)
SZA 『SOS Deluxe: LANA』
脆弱な気持ちをありのままに吐露し、人々の共感を得た名作『SOS』。あれから2年、SZAは新たな15曲を加えた大スケールなデラックス版をリリースした。ヴォリューム感のある追加曲は、独立したアルバムとして聴きたいほどの完成度だ。エレクトロ、ポップ、ソウルの魅力が溶け合う音色と、SZAのエモーショナルな歌声には終始温かみを覚える。独り言のように紡がれていく歌詞では、時に自己肯定する姿も描かれるが、その葛藤はまだまだ弱音で溢れていて、脆い。彼女が『LANA』で見せる姿は、『SOS』で描かれた《完璧ではないこと》への肯定をさらに深めている。加えて、“Saturn”が象徴する《困難な現状からの脱却》という次へ向かう姿勢もあり、このデラックス版はオリジナルを補完するためにも、今後のSZAを理解するためにも重要な一枚と言えるだろう。(Cookie)
Mario 『Glad You Came』
15歳で鳴り物入りデビューしキャリアも早20年以上、『The Masked Singer』出演も話題になったマリオの新作は、ジェイムス・フォントルロイが新設したレーベル〈New Citizen〉からの記念すべき初リリースに。総指揮も務めるジェイムスが大半の楽曲でペンを握り、レオン・トーマスやBNXY、ポップ・ワンゼルら豪華制作陣も名を連ねるが、プロダクションの重心はあくまでも主役の歌。70年代ソウルの香り漂うタイトル曲やセクシーに迫る"Keep Going (Aaaaahhhh)"、冒頭でルーサーを思わせる"I'm Sorry"(短すぎ!)など、30代にして成熟したマリオのヴォーカルが冴え渡る充実作だ。(Yacheemi)