2024/11/29 19:00

Wicca Phase Springs Eternal 『Midnight at the Castle Moorlands』

ウィッカ・フェイズ・スプリングス・エターナルは、インディロックバンドのタイガーズ・ジョーのメンバーとしてキャリアをスタートしたアダム・マキルウィーによるプロジェクト。故リル・ピープも擁するコレクティヴ、ゴスボーイクリックの一員としても知られている。本作は全曲をセルフプロデュースで制作した、インディロックとエモラップを行き来するダークで美しい作品だ。むしろヒップホップ寄りのスタイルは中心ではないものの、それらがトラップビートと普通に並ぶ作りは紛れもなくSoundCloudラップマナー。フォークやシンセポップなどバラエティ豊かなサウンドが展開されているが、ハイライトはやはりエモラップ路線だ。


XV, MIKE SUMMERS 『Blog Era Is Dead』

XVは「ブログ・エラ」と呼ばれる2000年代後半から2010年代前半にかけて注目を集めたラッパー。同時期にブレイクしたJ・コールやケンドリック・ラマーとも共作曲を持つ、この二人に並ぶ「ビッグ3」の一角になり得た実力派だ。旧知のプロデューサーのマイク・サマーズとタッグを組んだ本作は、そんな「あったかもしれない未来」を考えてしまうような快作。XVにとっての黄金時代の終わりを宣言するような寂しさのあるタイトルだが、その柔軟でスキルフルなラップの輝きは全く失われていない。マイク・サマーズのビートもブーンバップを中心に、トラップやメロウなファンク路線なども織り交ぜてXVの魅力を引き出している。

BANDCAMP

Tommy Wright III 『Feel Me Before They Kill Me』

最後にリイシューを。トミー・ライト・IIIはスケートビデオをきっかけに2010年代にじわじわと名前を広げた、メンフィスのベテランラッパー兼プロデューサー。2022年にはビヨンセのアルバム「Renaissance」の冒頭を飾る「I’M THAT GIRL」でサンプリングされたことでも話題を集めた。本作は1998年にリリースされ、今年9月に各種ストリーミングサービスで配信が解禁されたアルバム。妖しく時にソウルフルなサウンドに三連フロウを多用したラップが乗るスタイルに、現行シーンとの繋がりを見出すことは難しくないはずだ。件のビヨンセ楽曲でサンプリングされた声の持ち主、プリンセス・ロコももちろん参加。

[連載] DC The Don

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