過去の自分を否定せずに、“今光⽰せ 過去誇りながら”

──音楽との向き合いかたがとても前向きになっているようですが、ライヴをすることにも前向きになれていますか。
けんいち:ワンマン・ライヴを歌い切る自信は、まだ持てていないです。段階を踏みながら、一歩一歩改善していってる感じです。
──無理が100、余裕が0とした場合、今はどれくらいの感覚ですか。
けんいち:50くらいですかね。実は何本かライヴが決まっているんですが、心の隅で尻込みをしている自分がいます。それでもライヴを入れているのは、人前に立った時に自分の体に起こっている変化を、ちょっとずつ見られるようになってきたから。
最初は声が出ない…と、とにかくパニックになっていました。今では「こうなってるから、こうしよう」と立て直しができるようになりました。100だった感覚が95になり、80になり、なんとか戻ることなく50まで来れているんですよ。
──すごいことだと思います。何かきっかけがあったんですか。
けんいち:この間、バスケの試合でライヴをしたとき、チームの雰囲気がすごくよかったんですよ。音響さんも照明さんも会場の周りを案内してくれるかたも、みんな超ウェルカム。そんな現場だったので、チーム一体となって会場を盛り上げる感覚がありました。たまたま僕が前に出て歌っているだけで、お客さんからの拍手はチーム全体へ送られていると感じました。そう思えたときに、心の緊張度が100から0の側にグンと下がった。ソロになってからは、ひとりで音楽をやっているような気がしていたんですけど、「みんなで協力してやってんやから大丈夫やわ」と感じられたんです。
「作るの楽しい」まで来れているので、このまま「歌うの楽しい」を目指したいですね。僕の場合だと、0になったらきっと調子に乗っちゃうのから、5か10くらいまでいけたらいいなと思ってます。とはいえ、焦ってもいいことはないので。戻ってしまうこともあるでしょうけど、それでもなんとかして、ワクワクできるようにちょっとずつ練習していきたいですね。
──いろいろな人と関わるようになり、気づきの多かった9年間なんですね。
けんいち:いろんなありがたみに、少しずつ気づけるようになってきたんですかね。最近では、自分に対する向き合いかたも変わってきたんですよ。もともとの僕は、過去の自分をめちゃくちゃ見下していたし、嫌いやったんです。でも、ちょっと待てと。88歳まで生きるとしたとき、44歳は人生の半分終わってるわけじゃないですか。それで過去の自分を否定するのって、俺を半分否定することになるわけで。悲しいですよね。
だから、ロードオブメジャーの「僕らだけの歌」で“過去誇るよりも今光示せ”と歌ったのに対比して、「全く以て」では“今光⽰せ 過去誇りながら”と書きました。作詞した段階では、まだ誇れてないんですけどね。でも、この先の僕は誇りながら生きていきたいという願いをこめています。あのときの僕はこう考えていたけど、今の僕はこう考えているという思考の違いを形にできるのも、長いこと続けてきたからこその表現の面白さのひとつですね。
──では最後に。現時点での“けんいちらしさ”って、なんだと思いますか。
けんいち:「なんやかんや、音楽がめっちゃ好きなやつ」ですかね。
編集 : 石川幸穂
いちごの花言葉「尊重や愛情」をテーマに、日記のように綴られた10曲
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PROFILE : けんいち
高校生からバンドを始め、2002年にテレビ番組の企画にてヴォーカリストとして選出され、「ロードオブメジャー」が誕生。デビュー・シングル「大切なもの」はミリオンヒット、2003年リリースのアルバム『ROAD OF MAJOR』はインディーズ・バンド初のオリコン初登場1位を記録。この記録は現在もまだ破られていない。その後も数々のヒット曲をリリースするが、2007年7月に惜しまれつつも「ロードオブメジャー」は解散。
現在は、けんいち名でソロで活動し、毎週月曜23時のインスタ・ライヴ配信、ファン・コミュニティ「きたがわ家」での発信、2024年にはアイドルグループ・ふぇありーているず!へ「この素晴らしき」の楽曲提供を行うなど、精力的に活動している。
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