愛する人と一緒にいることを歌っているのに、孤独を歌っているようにも感じられる
――リード曲の“青瞬(せいしゅん)”は走馬灯のようでもあり、過去と未来をつなぐ今この瞬間を表しているようでもあり、そのあたりも死生観とリンクします。
マエダ:この曲の歌詞を書いてるときに、めっちゃ泣いてもうたんです。いろんなことを思い出して、自分がタイム・スリップしてるような感覚になって、うわあ、こんなことあったなあ……って。自分的にすごく自信のあるメロディと歌詞ができたから、メンバーに聴かせて微妙なリアクションされたらどうしよう!? と思ったりもしてたんですけど(笑)、スタジオでりょーさんにアカペラで歌ったら「そりゃ自信あるわ」と言ってもらえて。それがすごくうれしくて、今でも鮮明に覚えてます。
たなりょー:“青瞬”は8曲の中で最後にできた曲なので、出来上がりがめっちゃ早かったですね。ほんと意思疎通もスムーズに進んで、ポンポンポンとテンポよくできていって。それがリード・トラックになるというのは、なんだかバンドっぽいなあと思います。
――さらに『歌葬』で象徴的なのは、マエダさんの音楽家人生の新旧ラヴ・ソングである“月に咲く”と“お願いダーリン”の2曲で締めくくるところだと思います。“月に咲く”は“お願いダーリン”よりも確実に相手を思う気持ちが増えているけれど、根本には同じマインドを感じました。
たなりょー:シリアスな曲が多いぶん、カズシくんの真っ直ぐさという本質的な部分が出ている“お願いダーリン”で締めくくりたかったんですよね。あと“月に咲く”のサビ頭の歌詞は、カズシくんが前に組んでいた逢マイミーマインズの曲の歌詞の一部なんです。
マエダ:「僕を歌ったら全部君のことだった」というフレーズは自分的にすごくいいし、風化させたくなくて。でも同じことは歌われへんなと思っていたときに、歌いたいメロディとその歌詞がバチッとハマって出てきたんです。もう“お願いダーリン”以上のラヴ・ソングは作れへんかもと思ってたんですけど、“月に咲く”は「これはほんまにラヴ・ソングなのか? もっとすごいものなんちゃうか」と思うような、ラヴ・ソングの域を超えるようなものが作れて。
――月というモチーフも相まって、宇宙を漂うような感覚をおぼえる曲でした。
マエダ:月面の荒野のような雰囲気が演奏にあって、歌詞は愛を歌っていて。このバランスがすごいですよね。愛する人と一緒にいることを歌っているのに、孤独を歌っているようにも感じられる。この演奏がついてこその“月に咲く”やなと思います。
――『FREESIAN』で表現の幅を広げて、『歌葬』ではそれに加えてよりディープな表現を実現させた皆さんならば、11月の渋谷CLUB QUATTROワンマンでもいいライヴができそうですね。
マエダ:会場が大っきくても小っちゃくても僕らのやることは変わらんというか、どんだけ伝えられるかしか考えてないし、それ以外考えながらライヴできないし。ほんまに全力ぶつけるだけみたいな気持ちではいます。ただ、当日パンパンになった渋谷CLUB QUATTROが見れたらいちばんですね。
隆之介:カズシはお客さんが多いと豹変するんですよ。びっくりする。
MASASHI:うん、大舞台に強いよね。
マエダ:目立ちたがり屋やからお客さんが多ければ多いほど、会場がでかければでかいほどほんまにメラメラ燃えてくる(笑)。アウェイとかなんも関係ない!
たなりょー:カズシくんがどんなライヴをするんやろって思うから、フリージアンとしてもいろんなステージをいっぱい経験したいんですよね。
――フリージアン、演奏面もライヴ面でもまだまだやりたいことが山ほどありますね。
マエダ:ほんまっすね。行ったことない土地でライヴもしたいし、海外にも行きたい。京都のライヴにたまたま飛び込みで入った海外のお客さんが、その後にすごい長文の英文メールを送ってくれたんです。翻訳アプリにかけたら「日本語は全然わからないけど、君たちの伝えたいことが伝わってきたよ。楽器最近触れられてなかったから、帰ったら触ってみるよ」って書いてあったんですよ。そこで海外の人にも届く可能性を感じたし、あと僕も自分がこの先どんな歌詞やメロディを書くのかめっちゃ楽しみなんです。というのも僕、“月に咲く”をリリースしたタイミングで結婚しまして。
――へえ! おめでとうございます! では“月に咲く”に出てくる“君”は奥様ですか?
マエダ:そうです(笑)。自分としてはこれからもほんまのこと歌い続けたいし、なんも変わらんかもしらないですけど、これからの自分が書く新しいラヴ・ソングはどんなんなんやろ? と考えたりします。でも『歌葬』の制作で、ストレスを感じているほうがいい曲を書けることに気づいてしまって……。
――新婚さんなのに……。
マエダ:昔ライヴハウスの店長に「マエダは絶対一生ストレス抱えて生きていけ。お前は幸せになったらバンド人生が終わる」と言われたこともあるんです。だからそのバランスをこの先どうやって取っていこうかなと考えるのも、ちょっとおもろいなと思っていて。これからの自分にどんな変化があるのか、すごく期待してるんです。
――『歌葬』という作品でも明らかでしたが、フリージアンは現状維持なんてしている場合じゃないですね。
マエダ:もっと脳みそスパークさせていかなあかん(笑)。やっぱ僕は、メンバーとも聴いてくれる人とも傷の舐め合いをしたいわけじゃないし。胸ぐら掴んででも自分自身に「見て! 山頂はあそこにあるんだ。もっともうちょっとで登りきれるから! 」と言いたいし、「もうええやん、無理せんと降りようぜ」とは思いたくないんですよね。
編集 : 石川幸穂
シリアスな死生観をバンドで掻き鳴らすファースト・EP
ライヴ情報
〈FREESIAN ONEMAN LIVE 2024 -TOKYO-〉
日付:2024年11月16日(土)
会場:SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 17:15 / START 18:00
前売り ¥3,800 / 当日 ¥4,500
[チケット]
イープラス:https://eplus.jp/freesian/
ローソンチケット:https://l-tike.com/freesian/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/freesian-oneman2024tokyo/
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PROFILE:フリージアン
2021年正月、「最強のジャパニーズソング」を追い求めるためにどうしても手ぶらで歌いたいVo.マエダカズシが、歌以外全部やってくれそうなメンバーを集めて神戸で結成。
どこか懐かしさを感じさせる人肌の温もりがこもったメロディと、果てまで突き抜けていくようなド直球な歌声、そして激しく荒々しくも緻密にサウンドメイクされたバンドサウンドは、一度聴くだけで真水のように身体に染み込んでいく。
いま日本で一番清々しい日本語ロックバンド。
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