2025/04/04 18:00

どんな人生のステージでも、文化活動は並行してできる


──この作品を経たDMSの次なる一歩も気になるのですが、現段階で考えていることはありますか?

PETAS:自分の歌を活かした音楽であることは今後も変わらないと思いますが、それ以外はまだぼんやりとしたアイデア段階です。その一つとしてビートに対する意識はさらに強くなっていくんじゃないかなと。

──もう少し具体的に言うと?

PETAS:これまであまりヒップホップを聴いてこなかった人生だったんですが、ここ5年で徐々に聴くことが増えて。バンド・サウンドにどうヒップホップの手法や影響を取り入れていくかは色んなアーティストがやっていると思うのですが、そこに興味が沸いてきました。

──なるほど。ヒップホップに近づいたきっかけがあったんですか?

PETAS:バンド名が変わったEasy Life(現Hard Life)にハマったことが大きいですね。このヒップホップを人力でやっている感じがいいなと思って、彼らをずっと聴いていたら今まで自分とは距離があったKendrick Lamarのすごさもわかってきた。お恥ずかしいくらいにヒップホップの入り口として王道だし、ハマるにしては随分遅れましたが、今いちばん自分たちでもやってみたいテーマですね。

──最後に聞きたかったのが、プロフィールに「ミュージシャン・社会人の“二刀流”」と掲げているじゃないですか。今、音楽活動だけではなく別で仕事をしている方自体、全く珍しいことではないと思いますが、この「二刀流」であることはDMSにとってどれほど重要だと考えていますか?

PETAS:メンバーによって考えは違うと思いますが、僕にとってのDMSは他の仕事での案件と並行して動いている通年のプロジェクトの一つという感覚なんです。プロフィールにも載せ始めたのは、ライヴや何かのお誘いを受けた時に毎回色んな事情を説明するのが大変だからというだけで。昔だったら仕事をしていると本気で音楽をやっていないという印象を持たれる懸念もありましたが、今そう思う人もいないでしょう。

先ほど話した佐藤健さんの例もそうですが、映像監督やクリエイターからの刺激を仕事で得て、音楽活動にフィードバック出来るのは良いなと。また逆もあって、音楽活動で得た経験を仕事で活かしたり、僕の場合はうまく回っていると思います。

そして、何よりそれぞれが経済面でも自立した状態で音楽に取り組めることは素晴らしい。その反面、今日みたいなこういう取材の場に全員揃わなかったり、もったいないと感じることもありますが。

──「二刀流」であること自体が何かの意義を持つものというより、ごく自然な生活の営み方として仕事とバンドがあるということですね。

PETAS:そうですね。あえてそこにメッセージがあるのだとしたら、もうかなり希薄になりましたが、バンドをやるのは大学生まで、趣味でやるにも25歳まで、結婚したらやってられないみたいな、線引きに対するアンチテーゼの思いはあります。音楽に限らず、スポーツでもなんでもいい。どんな人生のステージやタイミングでも文化活動は並行してできるんだよ、ということはこのバンド自体のメッセージだと思うし、このメッセージを受け取った人が何かを始めるきっかけになってくれたら嬉しいですね。

──4月18日には、渋谷Spotify O-nestで本作のリリースイベント〈CHAMPAGNE SUPERNOVA VOL.2〉が開催されます。共演にPablo HaikuとDeep Sea Diving Clubを迎えますが、DMSとしてはどのように臨む予定ですか?

PETAS:色々な人に「すごいいいラインナップだね」と言っていただくことが多くて、自分でも今から当日が楽しみです。DMSとしては長い尺のライブは久しぶりで、今回のアルバムの“ライヴ・モード”を強く出していきたいと思っています。またこの日はサックスのサポートが加わるという初めてのチャレンジがあったり、自分が演出した映像の演出をきちんと全曲につけて、アルバムの世界観をより感じることの出来るライヴにする予定です。一人でも多くの方に観ていただけたら嬉しいです。

編集 : 石川幸穂

【ブックレット特典付き】“ライヴ映えする曲”をテーマに制作された、粒揃いのセカンド・アルバム


ライヴ情報

2nd Full Album『Loading…』 Release Party〈CHAMPAGNE SUPERNOVA VOL.2〉

2025年4月18日(金) 渋谷Spotify O-nest
OPEN 18:30/START 19:00

【出演】
Dortmund Moon Sliders
Pablo Haiku
Deep Sea Diving Club

【チケット】
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2508646

Dortmund Moon Sliders のほかの作品はこちらから

PROFILE : Dortmund Moon Sliders

メンバー全員が一般企業に勤めながら、音楽活動を両立させている“二刀流”4人組クリエイティヴ・チーム。
リスナーを「週末の非日常」へ誘うサウンドに乗せて、「日々の生活」を綴ったリリックを歌う“日常と非日常を行き来する”独自の世界観が特徴。
楽曲・映像・アートディレクションと音楽活動におけるクリエイティブ、活動におけるマネジメントも含め、全てメンバー自ら DIY = Do It Yourself で制作している。

■Official Site : https://www.dortmundmoonsliders.tokyo/
■X : @DMS_BAND_TOKYO
■Instagram : @dms_band_tokyo
■YouTube : @DMS_BAND_TOKYO

この記事の筆者
峯 大貴

1991年生まれ、音楽ライター兼新宿勤務会社員兼大阪人。京都のカルチャーを発信するウェブマガジンアンテナ在籍。CDジャーナル、OTOTOY、Mikikiなどで執筆。過去執筆履歴などはnoteにまとめております。
Twitter:@mine_cism

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この記事の編集者
石川 幸穂

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[インタヴュー] Dortmund Moon Sliders

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