2024/02/29 17:00

今回の視聴機、LUMIN U2、ネットワーク・オーディオの音質に大きな変化をもたらすネットワーク・トランスポート

山本浩司のリスニング・ルームに導入されているLUMIN U2

山本 : 『ウェイティング・フォー・コロムブス』はジョージ・マッセンバーグが録音を手掛けていますね。彼はGMLというブランドで、ハイファイな機材も製作していますが、やっぱり、そういう感じありますね。

高橋 : はい、西海岸らしい抜けの良さがあって。『ディキシー・チキン』以後のリトル・フィートのアルバムはどれも音が良いです。山本さんちのJBLで聴いているから、余計にそう思うのかもしれないですが。というあたりで、山本さんにこの部屋のシステム、特にネットワーク・オーディオ環境の話を窺いたいんですが。

山本 : はいはい、機材の説明をするとLUMINのU2、これは去年買ったんですけど、ネットワークのトランスポートです。そのUSB出力がSOULNOTE S-3というSACDプレーヤーにUSB入力があるので、そこに入ります。S-3は10MHzの外部クロックが入るので、SOULNOTEのX-3から供給しています。音楽ファイルのサーバーにしているのはDELAのN1A/2。

最上段にLUMIN U2、2段目にダウンロード音源を格納しているネットワーク・オーディオ用のNAS、DELA N1A/2、その下に、外部クロックとして使っているクロック・ジェネレーターのSOULNOTE X-3、そしてラック右側にはDACとしても使用しているSACDプレイヤー、SOULNOTE S-3という、ネットワーク・オーディオ〜DA部の構成。

高橋 : このDELAのサーバーはOTOTOYが開発に協力したものですね。僕も少し前まで使っていました。それで、僕もネットワーク・オーディオ環境、それなりに改善には努めているんですが、なかなか複雑で難しい。ルーターやハブなど、オーディオ製品とは思えない部分でも音が変わりますよね。

山本 : 変わりますね。僕はかなり早くからネットワーク・オーディオを始めたので、たくさん試行錯誤しました。インターネットやLAN、Wi-Fiの環境というのはノイズの塊なんで、そこを絶縁してやると、音は恐ろしく変わりますね。

高橋 : LAN接続も間に光変換をかましたり、僕もやりたいやりたいと思っていながら、まだできていないんです。

山本 : この家の場合は向こうの部屋にルーターがあって、外からのインターネットはそこに入ります。この部屋にはそのルーターからの受けのハブがあります。これもDELAのS100というオーディオ用のハブですね。そこからLUMIN U2へのLAN接続に光変換を入れています。エディスクリエーションのFIBER BOX 2という香港の若いマニアが作っている光変換ボックスですね。これを入れたのはすごい効きました。

高橋 : なるほど。でも、およそオーディオとは思えない機材にお金かけて、機材や接続ケーブルをごちゃごちゃさせてというのは、なかなか踏み出せない。

山本 : この光変換ボックスは23万円ぐらい。でも、うちの環境はこれで本当に良くなりました。LUMIN U2は光変換のSFPトランシーバーを付けなくても、これ自体がSFPの光LANコネクターを装備してるんですよ。

高橋 : ああ、それは良いですね。

山本 : それもLUMINを買った理由のひとつですね。

ネットワーク、デジタルに特化した豊富な入出力。左側から各種多彩なデジタル出力が4つ並び、DACへの出力用のUSB、その他の入力用のUSBが2つ、そして文中にある光変換したLAN回線を直接流し込める光LANコネクターと通常のLANコネクターを備えている。

高橋 : LUMIN以前はLINNのネットワーク・プレイヤーでしたよね?

山本 : LINNのCLIMAX DSをずっと使ってたんですけど、DSDが聞けなかったんですよ。それからTIDALがMQAで配信始めたんですけど、LINNはMQAやるつもりが一切ない。そんな時にLUMINのネットワーク・トランスポートに出会って。最初はU1 Miniというトランスポートを使っていたんですが、去年、LUMINの香港の連中が東京に遊びに来た時にこれちょっと試してみてって言われて、聴いたらやっぱり音良くなったと思ったので、U2に替えました。

高橋 : 僕も以前ネットワーク・プレイヤー、DAC、アンプまで一体形のLUMIN M1というエントリー向けの製品を試用させてもらいましたが、その時に思ったのが非常にユーザー・フレンドリーだということ。繋ぐとアッという間に音が出るし、アプリの出来も良いですね。ネットワーク・プレイヤーはそこが重要。

「LUMIN App」に関しては詳細はコチラを
https://www.bright-tone.com/pages/73.html

山本 : LUMINは実は日本のオーディオ・メーカーのネットワーク・プレイヤーのアプリも作っていたりします。

高橋 : そうなんだ。

山本 : ネットワーク・オーディオの世界では今、指導的立場にありますね、このメーカーは。香港の連中で若いんですよ。みんな30代、40代ですね。

高橋 : 今回、僕もU2を試用させて頂いています。まだ数日なんですが、ネットワーク・プレイヤーとしてU2を入れると、システム全体の音が良くなった気がしました。静けさとか濁りのない感じが一段階上になったような。

山本 : U2になって、音が良くなった理由って色々あると思うんですけどね、ひとつにはリニア電源なんすよ、これ。電源トランスを積んでいます。

高橋 : なるほど、スイッチング電源ではない。そこはノイズ対策にも効きそうですね。

山本 : あんまり決めつけちゃいけないですけど、スイッチング電源の機材って、僕の耳には少し音が細かったりします。LUMINもこれまではスイッチング電源だったんですが、次にやることは電源だと思ったんでしょうね。あと、僕はRoonアプリは使っていないんですが、これはRoon Onlyモードというのがあります。その設定にすると、他の機能はすべて使えなくなって、Roon専用のプレイヤーになるんですが。

LUMIN U2の内部。右側にU2の音質向上をもたらした電源部。

高橋 : 僕はRoonのヘヴィ・ユーザーなんですよ。自宅では8割がたはRoonで音楽を聴いている。なので、Roon Onlyモードで使用するのも快適でした。ちょっと音も変わる気がしました。

山本 : 要するに、余計な動作は一切させないので、キルスイッチみたいなものですね。それはやっぱりちょっとね、音、良くなりますよね。

「Roon Onlyモード」に関しては詳細はコチラを
https://www.bright-tone.com/pages/255.html

高橋 : なるほど、ネットワーク・プレイヤーに100万円はなかなか出せないですが、兄弟機のU2 Miniもありますし、俄然、LUMINのRoon Only環境が気になってきました。というところで、もう一度、音を聴きたいんですけれど。今日は僕が作ってきたTIDALのプレイリストをもとに曲を聴いてきました。でも、TIDALのストリーミングとDELAのサーバーに入っているデジタル・ファイルでは音が違うかどうか、聴き比べてみたいんです。

山本 : じゃあ、『ディキシー・チキン』の同じ2023年リマスターで聴き比べてみましょうか。

高橋 : プレイリストの最後に入れた「Juliette」を聴きましたが、これは全然違いましたね。

山本 : 理屈の上では、違っちゃいけないはずなんですが。

高橋 : DELAのサーバーから読み出したファイル再生では定位がびしっと決まりました。TIDALだとそこが少し滲む。

山本 : TIDALの方が少しハイ上がりですかね。

高橋 : ハイ上がりとは感じなかったですが、むしろファイルの方がミッドハイの迫力が前に出てくる。でも、ローもがっしりしているから、全体のエネルギー感もある。TIDALではそのへん、ちょっと音像が甘くなりますね。もちろんTIDALだって、良い音なんですけれどね、山本さんちで聴き比べなければ、ここまでの差は感じなかったかもしれない。

山本 : でも、さっき話したように、うちは絶縁とかノイズ対策とか、いろいろやってます。それでも、インターネット経由のストリーミング再生と、DELAのサーバーから読み出すファイル再生では音が違ってくるということですね。

高橋 : 考えてみれば、この同じ部屋の中にあるサーバーからファイルを読み出すのと、どこか遠い国のサーバーからデータが送信されてくるのでは、音が違うのは当たり前なのかもしれません。家の中でどんなに対策しても、上流の方で揺れとかノイズ混入があったら、その影響からは逃れられませんから。

本連載8枚目の音の良い“名盤”

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今回の機材──LUMIN U2

LUMIN U2、上記で導入されているのはシルバーだが、コチラのブラック仕上げもある

これまで高い技術力で特にネットワーク・オーディオの分野で高い評価を受けてきた同ブランドの最新型トランスポート。LUMIN T3の設計哲学をトランスポートにも展開、さらには数々の賞を受賞したLUMIN P1のシャーシ構造方法や、LUMINトランスポートで初めてリニア電源設計などを採用、そしてLUMIN appとの連携による快適な操作性も含めて、これまでの同社のさまざまなノウハウが詰め込まれた、LUMINのハイエンドなネットワーク・オーディオ環境の中核となるネットワーク・トランスポート。「Roon Onlyモード」対応によるRoonReadyの音質向上、TIDAL、Qobuzといったストリーム・サービスのDSD変換、アップサンプリング機能などなど、多様化するネットワーク・オーディオのさまざまな入出力に対して注目の機能を盛り込み、まさにネットワーク・オーディオの中核として隙のない1台。

(編集部)

LUMIN U2のその他詳細はこちらのブライトーンの公式ページにて

LUMIN U2製品ページ
https://www.bright-tone.com/pages/72.html

LUMIN U2販売ページ
http://brighttone.shop14.makeshop.jp/

LUMIN The Audiophile Network Music Transport (U2)
DSDサポート : DSD 512 22.4MHz,1bitまでサポート
PCMサポート : 768kHz 16-32bitまでサポート
アップサンプリング周波数及び対応bit数 : 全てのファイルがDSD256及び384kHz アップサンプリングに対応
デジタルアウトプットステージ : USB : Native DSD512 support / PCM 44.1–768kHz, 16–32-bit, Stereo
Optical, Coaxial RCA,Coaxial BNC & AES/EBU : DSD (DoP, DSD over PCM) 2.8MHz, 1-bit / PCM 44.1kHz–192kHz, 16–24-bit
光ネットワーク : Industry-standard SFP / 1000Base-T Gigabit Ethernet
パワーサプライ : 内部リニアトロイダル ローノイズリニアレギュレーター
サポートフォーマット : DSD Lossless : DSF (DSD), DIFF (DSD), DoP (DSD) / PCM Lossless : FLAC, Apple Lossless (ALAC), WAV, AIFF / Compressed (lossy) Audio : MP3, MQA
サポートコントロールデバイス : Apple: iOS11.0以上推奨 / Android:Android 4.0以上推奨
インターフェース : Ethernet RJ45 network 1000Base-T / USB flash drive, USB hard disk(シングルパーティション FAT32, exFAT, NTFSのみ対応)
ストリーミングプロトコル : UPnP (OpenHome), Roon Ready, Tidal Connect, Spotify Connect, AirPlay-compatible,. Gapless Playback, On-Device Playlist
UMIN App機能 : TIDAL, MQA, Qobuz, AirPlay, TuneIn Radio / ネイティブ対応 / Tidalのハイレゾ音源のMQAアイコン表示 / Qobuzのハイレゾ音源のhigh-resアイコン表示 / ボリュームコントロール / 高解像度アートワーク / アートワークキャッシュによる検索 / 複数タグによる操作 / 作曲者タグサポート / プレイリスト上でアルバムグルーピング機能 / アーティスト、アルバム、曲のインターネット検索 / Tidal, Qobuzも含めたプレイリスト保存機能
アップデート : 最新機能追加及び機能強化を行う自動ファームウェアアップデート機能
フィニッシュ : ブラックアノダイズドアルミ / ロウアノダイズドアルミ
寸法及び重量 : 350mm (W), 350mm (D), 60.5mm (H), 6kg

『音の良いロック名盤はコレだ!』過去回

第1回ニール・ヤング『ハーヴェスト』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第2回ジャクソン・ブラウン『Late For The Sky』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第3回ポール・サイモン『Still Crazy After All These Years』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第4回ドゥービー・ブラザーズ『Livin' on the Fault Line』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第5回ダニー・ハサウェイ『Everything Is Everything (Mono)』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第6回リンダ・ロンシュタット『Prisoner In Disguise』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第7回 エリック・クラプトン 『461 Ocean Boulevard』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

著者プロフィール

高橋健太郎

文章を書いたり、音楽を作ったり。レーベル&スタジオ、Memory Lab主宰。著書に『ヘッドフォン・ガール』(2015)『スタジオの音が聴こえる』(2014)、『ポップミュージックのゆくえ〜音楽の未来に蘇るもの』(2010)。

山本浩司

月刊「HiVi」季刊「ホームシアター」(ともにステレオサウンド社刊)の編集長を経て2006年、フリーランスのオーディオ評論家に。自室ではオクターブ(ドイツ)のプリJubilee Preと管球式パワーアンプMRE220の組合せで38cmウーファーを搭載したJBL(米国)のホーン型スピーカーK2S9900を鳴らしている。ハイレゾファイル再生はルーミンのネットワークトランスポートとソウルノートS-3Ver2、またはコードDAVEの組合せで。アナログプレーヤーはリンKLIMAX LP12を愛用中。選曲・監修したSACDに『東京・青山 骨董通りの思い出』(ステレオサウンド社)がある。

[連載] Little Feat

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