酸いも甘いも噛み分けて、吐き出す“ミドルエイジのオルタナ・ラップ”──Die, No Ties, Fly 『SEASONS』

2024/02/05 19:00

広義の愛は、僕も含めていま皆が飢えてるわけじゃないですか

──大人になり視野が広がると、音楽以外にも興味が向いて時間が割けなくなりませんか? 仕事や育児・家庭もあるなか、皆さんが安定して楽曲制作し続ける秘訣が気になります。

L : それは多分、皆、単に制作がライフワークになってるからですかね。そしていまの3人も年齢が近いから目線が狭まっちゃうから、いろんなタイプの人を入れたいって思ってますね。

p : 今作のNeibissや、EP『THE FLY』(2021年)でYNG JOE$さんを呼ぼうと思ったのも、自分たちに似てない人を呼ぶことで思ってもない方向に行くんじゃないだろうかって思ったんですよね。結果それが功を奏してよく仕上がりました。

Die, No ties, Fly - Moon feat. YNG JOE$

──今作で1番意外性があった客演は“貪るように”のbutajiさんでした。butajiさんとは、どんな繋がりだったんですか?

L : 僕が、いま止まっちゃってるけど、「クレイジーラブ」というポッドキャストをDos Monosの没 a.k.a NGS君と、South Penguinのアカツカって奴とやってるんですけど、アカツカとbutajiさんが仲良くて収録に来てくれた時に打診しました。

──この曲はタイトルとアートワークから性愛がテーマなのかなとおもいきや、歌詞を読むとそれも違うようにも思います。

p : あのビートを送ったときのタイトルが“Heartbeat”だったんですね。

L : ハートビートだから、やっぱ愛なのかなって思って。最初はセックス的な曲を書こうとしたんですけど、もっと広義な意味での愛、例えば人から認めてほしいとか。そういった広義の愛は、僕も含めていま皆が飢えてるわけじゃないですか。そこでbutajiさんには、そんな意味での愛をテーマにしたいと伝えました。

──butajiさんのヴォーカルがヴァースの区切りなく聴こえてきて、LEXUZさんとふたりで歌っているような構成も印象的でした。

L : そうですね。俺とbutajiさんで作って、後でVOLOさんに入れてもらったって感じなんで、あの曲だけfeat.VOLOさんみたいな構成になっていますよね。

V : “FOMA”も自分が最後に書きましたね。

──“FOMA”のLil' Leise But Goldさんも、butajiさんと同じくらい驚きました。

V : Lil' Leiseさんにはイベントでご一緒したのがきっかけでもしかしたらやってもらえるんじゃないかとダメ元でお願いしたら快諾してくれて本当に感謝です。最終的にはこれしか無いだろってくらいハマりましたね。

──Lil' Leiseさんの、〈気づいていたよ君と話しても本音言えない〉なんて、彼女の曲にもありそうな表現で、見事にハマってました。

V : もうLil' Leiseさんとできた事がファインプレーすぎた。アルバムを通して聴いても、あの曲が有るのと無いのとでは全然違う。

p : 僕らも誰にお願いしたら良いか分からないなか、Lil’ Leiseさんの曲はずっと聴いていたので、最後のピースがガチっとハマった感じがしますね。

L : あと入稿の1日前に女性のコーラスが4曲追加されてるんですよ。電影と少年CQのルアンちゃんっていう僕の飲み友達なんですけど、彼女の声が綺麗なのでコーラスを乗せてもらいましたね。

poivre

──今作はそうした色鮮やかな一面もありますが、対象的にOGGYWESTとVOLOさんの直近2枚はどちらもアートワークが暗く、サウンドもダークですよね。これは偶然なんですか?

L : ただのシンクロ二シティですね(笑)。

V : LEXUZ君が言ってたようにDie, No Tiesでメロウな曲をやれているから、自分の曲ではそういう曲をやらなくなったってのは、すごいあるかもしれないですね。シンプルに良い曲をつくりたいという欲をDie, No Tiesで消化できている。

──最近のAIWABEATZさんとの“Blue”(『Like No Other 3』収録)も、メロウでシンプルに良い曲でした。

p : あの曲は俺達と作ったアルバムの曲より良く感じちゃって嫉妬しちゃいますね(笑)。

──ちなみに、Die, No Tiesのライヴはやるんですか? 一説によると、LEXUZさんがライヴはやりたくないと言っているとか…(笑)。

L : そうなんですよ(笑)。過集中しちゃうんですよね。ライヴが決まると、ずっと家でリリックを繰り返してたり、気持ちも自分が削られるので、妻からもやめてほしいって言われてて(笑)。だから控えたいなって思うんですよね。

──ちなみにOGGYWESTのライヴは、めちゃくちゃ激しいじゃないですか。あれはなぜなんですか?

L : あれは、不安だからです(笑)。めちゃくちゃ緊張するんですよ。だから週3くらいライヴの練習をすることもあるのに、最後にそれを全部忘れるっていうサイクル(笑)。でも練習しないと、それはそれでクオリティは落ちるんですよねぇ。

V : まあそれが良いところというか、そういう感覚だから出ることもあるから。

L : 俺は自分はもっとライヴに向いてると思ってたんですけど、いざやってみると、俺には負担がでかいと思うようになったっすね。だからミックスとかのほうに注力するようになったのかもしれないです。

p : やってみて、俺が思ってたのとは違ったなってありますもんね。自分も緊張しいで、100人以上お客さんがいる場所でDJをやると緊張で手が震えてしまうんで、あまり集客が多いイベントのDJは受けないですもん。無理すると自分が1番きついんで。

L : そういう意味でも、昔なら俺はラッパーになれなかったなと思います(笑)。

──…あれ、この感じだとDie, No Tiesでのライヴは無いという方向ですね(笑)?

V : ま、タイミングだよね。

L : オファーのDMとかも頂いたりするんですよ。だけど単純に都合が合わないことも多いし、お断りするときには本当に申し訳ないなぁって思いますね。オファーを受けること自体は本当に嬉しいです。

p : 見れたらラッキーくらいの感覚でいいんじゃないですか(笑)。ディアンジェロみたいに。

L : そんなところで、おねがいします(笑)。

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過去作はこちらにて配信中

PROFILE

Die, No Ties, Fly

Die, No Ties, Fly(ダイノータイズフライ)は2020年のコロナ禍において長崎県佐世保のプロデューサーpoivre(ポワブル)がラッパーのVOLOJZAとLEXUZ YENに共作を提案したことから結成。同年に「Die, No Ties, Fly」、翌年の2021年には「FLY」と短期間に2枚のEPをリリース。そこから2年の制作期間を要したアルバム『SEASONS』は、多種多様なゲストに彩られつつもグループのテーマである〈日常の延長線上にある音楽〉にふさわしい普遍性をもったアルバムとなっている。「このまま」、「明るい夜 feat.Neibiss」、「貪るように feat.butaji」、など既発シングルのアルバムミックスを含む全10曲を収録。客演にはさらにOMSB、hikaru yamada、Lil' Leise But Goldが参加。コーラスにはルアン(電影と少年CQ)がクレジットされている。 poivreが全曲をプロデュース、またアートワークはVOLOJZAが、ミックス・マスタリングはLEXUZ YENが担当している。

【VOLOJZA X】
https://twitter.com/volojza

【LEXUZ YEN X】
https://twitter.com/88lexus_

【poivre X】
https://twitter.com/poivre0529

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