2022/06/28 17:00

コンパクトな筐体で充実のネットワーク・オーディオ環境を構築、Silent Angel M1

Silent Angel M1(写真はすべて完実電気提供)

山本 : 今回はSilent Angelという会社のネットワーク・オーディオ・プレーヤーを健太郎さんに使ってもらいました。

高橋 : M1ですね。

山本 : M1は欧米で「ストリーマー」と呼ばれるDAC内蔵のネットワーク・プレーヤーで、もうひとつZ1という製品がラインナップされていて、こちらはサーバー機能を有しています。Z1がちょっと面白いのはルーンサーバーがプリインストールされていて、出力先だけ決めればすぐにルーンで操作できて聴けるということ。今回はM1の内蔵DACを活かしてプレーヤーとして使ってもらったということですね。

高橋 : そうですね。M1からはアナログ出力もデジタル出力もどっちも使ってみましたが、アナログ出力の音の良さに驚きました。端正なキリッとした音でしたね。試聴機が届いて、箱を空けたときに「コレはなんの機械かな?」というような、あまりオーディオ機器っぽくないスタイルで。 でも背面みたら、ちゃんとアナログアウトもあるからオーディオ機器なのかという。僕の家では、主にこれに音源を入れたNASを取り付けて、そこから音源を読み込むというスタイルで聴きました。

こちらはSilent Angel M1の背面
DAC内蔵でアナログ出力用のRCA端子があり、本機とパワードのスピーカーという組み合わせでコンパクトなシステムを組むことも可能。デジタル接続機器はもちろん、USB経由で外部のDACも接続可能、入力ソースも各種ストリーミング・サービス、またNAS以外にも音源を入れたHDDとの直接接続での再生も可能、多様な出入力を備えて本機をネットワークオーディオの基幹にしてさまざまな接続方法で楽しむことができる。

山本 : Silent Angel社の純正アプリ、VitOS Orbiterの使い心地はいかがでしたか。

高橋 : このアプリ、すごく良くできてますね。ひとつだけ最初に戸惑ったのは、このアプリは音源ファイルのメタデータは読み出さずに動作するんですね。なので、アルバムのジャケットが出てこなくて。でも、それはアルバムの音源ファイルと同じフォルダーにジャケットの画像データが入っていれば反映されるという仕様でした。 だから自分でNASの中をちゃんと整理しておけば、むしろメタデータに頼るより確実なんですね。操作面では非常に使い勝手の良いアプリでしたね。いままで使ったこの手のネットワーク・オーディオ系のアプリのなかでも最上レベルだと思いました。

Silent Angel社のVitOS Orbiter解説ページ(英語版)
https://www.silent-angel-audio.com/orbiter-plugin

山本 : Silent Angelという会社は、QNAPの出身者が作った会社のようです。QNAPはNASやサーバーなど、いわゆるネットワーク系のコンピューター機器の会社なんですが、ここのNASをLINNが推していて、オーディオ好きにとってはLINNとQNAPのNASというのが補完関係になっているイメージでした。オーディオに加えて、コンピューターやネットワークに深い知見を持った人たちなんだと思うんですよ。

高橋 : すごいシンプルな筐体で、オーディオというよりコンピューター周辺機器みたいだなと思っていたんですが、正面にちゃんとヘッドフォン端子がついている。しかもこのヘッドフォン・アンプの音がとても良かったんですよ。僕の好きなゼンハイザーのヘッドフォンでも非常に良く鳴りましたね。ゼンハイザーは鳴らしにくいんですけど、すごく良い音でしたね。メーカーのWebサイトを見たらゼンハイザーのヘッドフォンが刺さっているイメージ写真があって、しかも自分が使っているHD600っぽいシルエットで。

Silent Angel M1、ヘッドフォンとの使用イメージ
前面のヘッドフォン・ジャックに直接接続し、ヘッドフォン・アンプとして使用も。ヘッドフォン部はディスクリート設計になっており、電流帰還型を採用、高いドライブ能力を実現している。またこの写真ではヘッドフォンとのサイズ比較で、そのコンパクトな筐体のサイズ感覚もわかる。

山本 : もしかしたらチューニング用にHD600を使っているのかもしれませんね。これUSBの出力があるのでで、もちろん外部DACをつないで聴くこともできる。

高橋 : それもやってみましたけど、わりと普通に使うのであれば内蔵のDACで充分に良い音がします。

山本 : そうでしたか。

高橋 : 内蔵DACの質を超える外部DAを求めるとなると、それなりの値段になると思います。10万円以下のDACだったら、あえてつなぐ必要なないかなと思いました。

山本 : M1とほぼ同じ筐体で、M1Tというアナログ出力のないバージョンもあるんですよ。33万円のZ1はアルミ削り出しの筐体だったり、かなりノイズ対策をしています。サーバーですが、ネットワークトランスポート(レンダラー)になるので、USB DACをつなげばM1と同じ様な使い方ができます。

関連機種 : Silent Angel Z1
Silent Angel Z1、シルバーとブラックで展開
文中に出てくるZ1はミュージックサーバー。Silent Angelの開発したLINUXベースのネットワークオーディオ用OS、“VitOS”を搭載し、AirPlay 2、Spotify connectといったストリーミングサービスに対応する他、Roon Server、DLNAレンダラーとして使用可能。筐体に航空宇宙産業で使われているアルミ合金を使用し、Silent Angleオリジナル工法(特許取得済)で削り出し加工を行い、音質劣化の大きな原因となる外来ノイズの飛び込みや回り込みを最小限に。また内部には新規開発したSATAケーブル、EMIアブソーバー等、ノイズ対策を徹底し、保存されている音楽や映像のクオリティーを損失することなく、ネットワーク・オーディオ機器へと送り出す。
Silent Angel Z1のアルミ削り出し筐体
参考 : Silent Angel Z1詳細はコチラへ
https://kanjitsu.com/product/z1/
関連機種 : Silent Angel M1T
こちらはDACを内蔵していないSilent Angel M1T
M1とほぼ同じ様な筐体に見えるが大きな違いはDACを内蔵しておらず、そのため前面のヘッドフォン出力、そして背面にもアナログRCA出力がない。外部のUSB DACとの組み合せやデジタル接続のみを想定する場合はコチラも選択肢に。
参考 : Silent Angel M1Tの詳細はコチラへ
https://kanjitsu.com/product/m1t/

高橋 : 面白いメーカーですね、Silent Angelという会社。どこの会社なんでしたっけ?

山本 : 中国、深圳に研究開発部門と工場、QNAP時代からの活動拠点であった台湾にも出先機関を持っています。QNAPがそもそも台湾の会社なんですよ。いわゆるパソコンとUSB DACを繋いで聴くスタイルよりも、こちらのほうが洗練された使い方ができるし、操作アプリをうまく使えば、ネットワーク・プレーヤーは非常に便利です。音はもちろんいいし。 

高橋 : NASの管理はPCにはなると思うけど、そのあたりはどう使い分けるかですね。 

山本 : 再生プレーヤーにはこういうものをうまく使うっていうことだと思いますね。

高橋 : いろいろなパターンが組めそうな機材ですよね。

山本 : いずれにしろ、OTOTOYでハイレゾの音源を買って楽しもうという人にはすごくお勧めできる製品です。僕は仕事がら超高額なオーディオ機器をテストすることも多いのですが、M1を聴いてすごく良いなと思ったのは音がしっかりしていること。特に今回紹介したような音源は聴くには中低域から中域にかけての音の充実度が重要で、そういう魅力をM1は持っている。超高額な製品の中にはワイドレンジなんだけど、音が薄かったり遠く感じたりする性格のものも存在します。そういうオーディオ機器でロックやR&Bを聴いてもしっくりこなかったりするんですよ。

高橋 : それ、わかります。たしかにそういう機材もありますね。デジタルオーディオは、例えば高級機で「うわーすごい広がる~」とか喜んでいても、しばらく聴いているうちに「う~ん、なんか薄いな」という製品もありますからね。

山本 : M1はそういった製品ではないですね。ロックやR&Bを楽しく聴かせてくれる、そんな魅力があると思います。

本連載5枚目の音の良い“名盤”

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今回の機材──Silent Angel M1

Silent Angel M1

ここ数年で、デジタル・オーディオにおいて中心的なカテゴリーとなりつつあるいわゆるネットワーク・オーディオ機器“ストリーマー”。
本機も、DAC内蔵のストリーマーで、ネットワーク上のNAS、またはHDDの直接接続などにも対応、自らアーカイヴしているデジタル音源をiOS/androidのアプリを組み合わせて、簡単にそして高音質で再生が可能。DSD256(11.2MHz), PCM 768kHzまでのハイレゾ音源の再生に対応(USB出力のみ)。さまざまなストリーミング・サービス(Spotify connect, amazon HD, TIDAL)、さらにはRoon Ready仕様、MQAは対応予定。ネットワーク、そしてデジタル・オーディオの現在の主要なサービス / フォーマットをまるっとこの1台で楽しめる。また前述のようにDAC内蔵でヘッドフォンやパワードのアクティブ・スピーカーを繋いでシンプルに音楽再生を楽しむことができるなど、多機能でありながら、シンプルなシステムを組むことを考えたときに非常に魅力的な構成となっている。電源部からオーディオ回路にいたるまでノイズ対策も施され、音質に影響を与える筐体内部で発生する電磁ノイズ(EMI)を吸収するSilent Angel オリジナルテクノロジー、EMIアブソーバーを各基盤に配置するなど、徹底したた高音質設計がなされている。
ヴァリエーションとしては4GB、8GBのメモリを搭載した「M1-4GB」「M1-8GB」がある。(編集部)

Silent Angel M1のその他詳細は、正規輸入代理店完実電気ウェブにて

https://kanjitsu.com/product/m1/

Silent Ange製品販売ページ

https://shop.kanjitsu.com/product-brand/silent-angel/

Silent Angel M1
価格 : 4GB ¥154,000 (税込)、8GB ¥229,900 (税込)(代理店販売ページより)

主な仕様
・寸法:155mm x 110mm x 50.4mm
・重量:1.63 kg
・入出力端子:デジタル出力:AES/EBU, I2S, Coaxial(PCM 384KHz,DSD128)、USB(PCM 768KHz,DSD256)、USB3.0×1/USB2.0×2(外部ストレージ),RJ-45(1000base-T)
・電源コネクター:5V/2A
・最大消費電力:10W
・電源:100 V 50/60Hz
・付属品:ACアダプター、電源ケーブル、LANケーブル
・保証期間:1年

『音の良いロック名盤はコレだ!』過去回

第1回ニール・ヤング『ハーヴェスト』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第2回ジャクソン・ブラウン『Late For The Sky』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第3回ポール・サイモン『Still Crazy After All These Years』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

第4回ドゥービー・ブラザーズ『Livin' on the Fault Line』──高橋健太郎x山本浩司『音の良いロック名盤はコレだ!』

著者プロフィール

高橋健太郎

文章を書いたり、音楽を作ったり。レーベル&スタジオ、Memory Lab主宰。著書に『ヘッドフォン・ガール』(2015)『スタジオの音が聴こえる』(2014)、『ポップミュージックのゆくえ〜音楽の未来に蘇るもの』(2010)。

山本浩司

月刊「HiVi」季刊「ホームシアター」(ともにステレオサウンド社刊)の編集長を経て2006年、フリーランスのオーディオ評論家に。自室ではオクターブ(ドイツ)のプリJubilee Preと管球式パワーアンプMRE220の組合せで38cmウーファーを搭載したJBL(米国)のホーン型スピーカーK2S9900を鳴らしている。ハイレゾファイル再生はルーミンのネットワークトランスポートとソウルノートS-3Ver2、またはコードDAVEの組合せで。アナログプレーヤーはリンKLIMAX LP12を愛用中。選曲・監修したSACDに『東京・青山 骨董通りの思い出』(ステレオサウンド社)がある。

[連載] Donny Hathaway

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