「もうアルバム作っちゃおう」って、たけちゃんが言いだした
──10月にバンドを組んで2019年12月10日が初ライヴ。どうでした?
SACOYAN : ソロでライヴするときと比べると緊張しなかったんですよね。自分の弾き語りのライヴってガタガタに緊張して、その緊張がアコギを叩いたりとかの激しいライヴにつながって、アドリブだらけになるんだけど。バンドでやると大きな脱線ができないので、冷静になれました。あと楽しいっていう気持ちがすごく強かった。心強いなって思いました。それはいまでも思います。
原尻 : 楽しかったです。最初のライヴで準備期間も短いわりには良かったんじゃないかな。お客さんもすごく温かかったし。SACOYANファンで横浜から来てくれたひともいた。
みわこ : お客さんがみんな温かかったです。
──SACOYANは以前にバンドを組んだことは?
SACOYAN : 10代のときにライヴを2回くらいやったバンドはあったけど、長続きは一切しなかったです。私にとっては、SACOYANSがはじめてちゃんと組んだバンドです。
──ライヴ後に作品を、それもいきなりアルバムを作ることになった経緯は?
SACOYAN : 初ライヴの評判がよくて、すぐにUTEROの大晦日のイベントにトリで出ることが決まり、その準備をしていたころに「もうアルバム作っちゃおう」って、たけちゃんが言いだした。「さっと録ってさっと出しちゃおう」って。みわこさんも賛成して、じゃあ私も、と。
原尻 : 俺だけビビってた気がする。
Takeshi : ライヴは4回しかやってなくて、そのままレコーディングしました。いま思えば無茶ですよね。
SACOYAN : UTEROの3階にあるスタジオ〈UNKNOWN〉で2日間で録りました。オケ録りに1日、歌録りに1日。

──ファースト・アルバムをリリースしたときの気持ちは?
SACOYAN : 私には宅録時代からのファンがいて、その人たちには「SACOYANとはこういうもの」というイメージがあるのは私もわかっていて。バンドとしての新しい側面にどういう反応をされるか、正直不安はありました。でもライヴもレコーディングも楽しかったし、単純に4人でいる時間がすごく楽しくて。そういう恐怖感みたいなものがすっぽりと抜け、なんとでもなるやみたいな精神状態でリリースしました。
──リリース後の反響は?
SACOYAN : 自分たちは意識していなかった “シューゲイザー” のくくりでアルバムが受けとめられたのが意外でした。作っているときは、自分たちのなかではシューゲイザーのシュの字も出てなかったんです。アルバムを聴いたひとたちから、音圧が大きくてコンパクトにまとまっていて、まるでシューゲイザーだ、と好意的に評価されたのが意外で。
そのとき流行っていたのは音数が少ない音楽で、客観的にアルバムを聴いたとき、流行りの音じゃないなっていうのが、いちばんの感想だったんですよ。自分は好きだけど流行ってる音楽じゃないな、でも楽しかったからいいや、と思っていました。なにも悲観はしていなかったけど。
アルバムをリリースしたら、逆のことをしている、違うやつらがでてきた、みたいな反応をもらえて嬉しかったです。30代・40代の私たち世代は懐かしい音だねって評価してくれたし、10代や大学生のひとたちは昔の音が現在進行系で活動していることに新しさを感じてくれました。ちょうど良いタイミングで出せたんだろうな、と思っています。
「SACOYANすごい人気だな」
──ファーストを引っさげて、大分、熊本、東京、大阪、京都でもライヴをしました。
原尻 : 東京がすごかったですね。いちばん思ったのは、SACOYANすごい人気だなって。福岡でいつもお酒飲んでるひととは思えない(笑)。単純にすごいなと。福岡もっと頑張らないと、って思いました。
みわこ : 東京も大阪も泣いてるお客さんがいて、SACOYANすごいなって思います。泣いてるひとたちを見ながら演奏して、貰い泣きしそうになります。「SACOYANのライヴが観れて嬉しいんだね」って。感動しちゃいます。
原尻 : SACOYANのファンにも、バンドとしても、好意的に受け入れられたのは嬉しかったです。

──セカンド・アルバムを作ろうと思ったのは?
SACOYAN : ファーストを出したあとすぐに、もう録っちゃおうって話になりました。ファーストのツアーでセカンドの曲もライヴでやるようになり、新鮮なうちに録りたいと。レコーディングしたのは今年の4月です。ファーストと同じスタジオで録りました。
──セカンドはこうしたいというのはあった?
SACOYAN : ファーストは勢いで出したところがあったので、セカンドは作り込んで、もうちょっと客観視したものにしたいと、個人的には思っていました。時間をかけて壮大なものを作るつもりだったのですが、思ったよりも時間がとれなくて、結局、焦りながら壮大なものを作ることになってしまった。
原尻 : バンドという側面では、ファーストはSACOYANの原曲を再現することに意識がありました。でもセカンドは、原曲は気にせず、自分のフレーズを自分で作ることが多くなりました。そういう意味では、よりバンドっぽくなったんじゃないかな。
Takeshi : ファーストは弾いてるギターのフレーズが結構単純なんです。セカンドは原曲と関係なく自分で作ったところがすごく多い。ライヴで弾いてるフレーズじゃないフレーズを家で考える時間が長くて、去年の年末くらいからずっと家でひとりでやっていました。1曲につき4曲分くらいのギター・フレーズが詰め込まれていて、たぶん聴いても誰も分からないと思うけど、自己満足かもしれないけど、それを作るのがすごく楽しかったですね。セカンドは前作にくらべると、やっぱりバンドっぽくなっています。ライヴの勢いみたいなのも録れてるし。