秋葉原は憧れの場所
──でも、そういう関係性を築けてきて、本当によかったです。今、秋葉原駅で鹿目さんと空野さんが手をつないで泣いた話が出てきましたが、EP『でんぱぁかしっくれこーど』は秋葉原を舞台にした「でんぱぁかしっくれこーど」も収録されているじゃないですか。みなさんそれぞれの秋葉原との出会いを教えてください。
空野 : 富山県に住んでるときから、インターネットでめちゃくちゃ熱いオタクの街っていうイメージがあったから、すっごい憧れでした。いざ単独戦闘型アイドルになって行ってみて、あまりにも自分の肌にあいすぎるって思ったんですよ(笑)。リリースごとにイベントをやらせていただいたり、なんか第2の故郷みたいに勝手に思ってますね。

天沢 : 宮崎県で中心部から遠くて、ライブも行ったことなかったんです。メイド喫茶も1店舗しかなくて。当時ヴォーカロイドが好きで、アイドルも流行り始めた時代だったので、秋葉原がすごいテレビにでてきて、「ここには自分が好きって思ったことを徹底的に調べあげて、どこまでもついていく、かっこいいひとたちがいるんだな」って思ったんです。「オタク特有の早口」って言うけど、感覚的な自分はできないから、オタクってかっこいいなって思うんですよね。上京してきたのはダンスをするためだけど働かないといけないから、知り合いに紹介してもらったのが、秋葉原ディアステージで、(小鳩)りあさんもいるので受けたのが始まりですね。
──そして、小鳩さんとは同僚になるという。
天沢 : 本当によくないですよ、推しと同僚になってしまうとダメ、めっちゃこじらせますね。こじらせオタクですごい迷惑がかかってるかもしれない。
──しかも、現在進行形のことですね。
天沢 : でも、めっちゃ優しいです。ちょっとキモいことを言っても許してくれます(笑)。
鹿目 : ベボガ!時代に秋葉原でたくさんライブする機会が多くて、秋葉原のライブフェスだと1日3回ぐらい別の会場でライブをしてたんです。「秋葉原のオタク」っていうより、アイドルオタクのイメージのほうが大きいかもしれない。昔の秋葉原の話になると、インターネットで調べても出てこないことも多いし、正直、疎外感を感じるところはあるんです。だから、そういう昔の秋葉原に詳しくない人たちの受け皿のポジションになろうって私は思ってますね。
高咲 : 私は秋葉原は憧れの場所でした。物心ついた頃からでんぱ組を好きになったんで、必然的に秋葉原が何か気になるし。初めて秋葉原に行けたのが、自分がアイドルになった後で、よくわかんないけど「私はここででんぐり返しができる」って思ったんですよ。変なことをしても受けいれてくれるような空気感がすごい伝わって。聖地っていうイメージもあって、でんぱ組の「アキハバライフ♪」のMVと照らし合わせて、同じ画角で撮ってみたりとかして。好きなものを好きって言えるような秋葉原のよさを、初めて秋葉原にはいった瞬間からめっちゃ感じたんで、パワースポットって思ってます。
──「でんぱぁかしっくれこーど」は韓国のAiobahnによるエレクトロなサウンドとともにいきなりハイライトを迎えますが、どう歌いこなしましたか?
鹿目 : ラップ部分が難しくて誤魔化せなかった(笑)。
高咲 : 私、レコーディングするときに、聴きながら歌詞の上に「上」とか「下」とかって書くんですよ。音程が上がったり下がったりするのを。で、めっちゃ記号だらけになっちゃって(笑)。
天沢 : 未解決事件の話とか、都市伝説チックな話がたくさん出てきて、そういうのも好きで嬉しくて。難しいことをたくさん言うんですけど、最後の2行が素敵な歌詞すぎて、レコーディングするときはめちゃくちゃ壮大な感情で歌ってました。目に見えるものが何かなくなったとしても、この曲がみんなの脳内にあるならずっと続いていくんだなって思って、すごい莫大な感情でした。
空野 : 今回はEP自体がかなりコンセプチュアルで、「秋葉原の街が覚えているであろう記憶を集めた」みたいな感じなので、今まで歌ってきた楽曲の概念を覆す曲だなって思って。自分の気持ちと同期させるとかいう次元じゃないなというのを感じたんですよ。あと、歌詞を書いてくださって畑亜貴さんは、でんぱ組.incの大事なときに絶対に書いてくださるってイメージがあって、ここで登場したことにはすごい意味があるのかなって。
──「でんぱっていこーぜ!!」は玉屋2060%(Wienners)編曲によるリード曲ですが、とにかく歌詞が長いですし、パート割りが細かいので、披露するのも大変では?
高咲 : でんぱ組って声がみんな特徴的だから、そのよさがすっごい生かしきれてて聴いてても楽しいし、MVもシーンがどんどん変わるから見てても楽しいし、でんぱ組の歌い方の可能性をすっごい活用できる曲って思いました。
空野 : 振りつけをしてくださったえりなっちさんは、TikTokでめちゃくちゃバズっている有名なダンサーさんなんですけど、今の時代にすごいあう曲だなって思って。考えるのが疲れちゃうから考えたくない、みたいなひとが多いじゃないですか。今の時代、何にも考えずにスッて聴けるような曲とか、簡単にかいつまんで理解できる曲とかがバズってるイメージがあって。なんかそういうニーズにあわせて作ってるのかなあと勝手に解釈した曲ですな!
──なるほどですな!
鹿目 : ファースト・インプレッションは、もちろん私たちだから説得力があって歌えるのかなっていう歌詞とかありますね。ただ、こちら側としては無責任に歌ってられる(笑)。
天沢 : ポップな音楽と振りつけなんですけど、歌詞をちゃんと見るとめちゃくちゃいいこといってる。自分もけっこう元気な曲を聴くのが苦手なんですけど、ちゃんと歌詞を見ると、すごい救われるというか、「そうだな」って思うことがいっぱいあって、「いいな」ってすごい思います。
高咲 : 人類滅亡のギリギリ最後みたいな感じしません?
鹿目 : やべえやつだ(笑)。
高咲 : 最後に悲しんでるんじゃなくて、「もうできる限り楽しんだほうがよくない?」みたいな感じで。