二階堂和美『にじみ』
二階堂和美 / にじみ
01.歌はいらない 02.女はつらいよ 03.説教節 04.あなたと歩くの 05.PUSH DOWN 06.ネコとアタシの門出のブルース 07.麒麟 08.蝉にたくして 09.岬 10.ウラのさくら 11.Blue Moon 12.萌芽恋唄 13.とつとつアイラヴユー 14.いつのまにやら現在でした 15.お別れの時 16.めざめの歌 17.足のウラ
※OTOTOYでは配信がございません。
生きて、動く歌たち
ひとたび聴くと、心のあちこちが動き、ほころんでいく。二階堂和美の2011年作『にじみ』は、全て自作の楽曲がそれぞれ短編小説のようでありながら、縁の深いミュージシャンとの呼吸の合った演奏によってアルバム全体がひとつの生命体のようにまとまり、生きた力を放っている。
二階堂和美は広島という地で、家族や近所の人と関わり、しがらみの中で歌を紡いできた。人に焦がれ、悔やみ、呆れ、それでも人の中で生きていく。そんな、一人の生きた女としての実感のこもった言葉が、変幻自在の歌唱でありありと歌われる。聴き手の中にある言葉に出来なかった想いはすっと掬い上げられ、形になり、心揺さぶられずにはいられない。
そして『にじみ』に心揺さぶられた一人である高畑勲が、二階堂和美に新たな活躍を提供し、彼女は今や国民の知る歌手になりつつある。二階堂和美自身も、『にじみ』によって動かされているのだ。「歌」とは、「生」とは。そして「二階堂和美」が何者なのかを真っすぐに教えてくれる、指標のようなアルバムだ。(佐藤みなと)