2014/02/20 00:00

INTERVIEW : 呼詩(+関口萌)

ーー昨日のライヴの「現在先行形」は本当に凄かったです。

呼詩 : 僕は昨日、ライヴの始まる前まで、パンクしてたんですよ。

ーーパンクとは?

呼詩 : 全部パンクしてたんですよ。つまり、服も自分で着れないし、全裸状態でタクシーに乗って、服を着させてもらって、それで、きのうはステージに立ったんです。だから、僕自身だけの力じゃ無理でした。いろんなひとに「呼詩がいけ」って言ってもらって、僕は正気を取り戻して。だから、俺は、全部ギリギリのところで表現してます。僕は現表現者です。アーティストです。だから、きっちり仕事はします。それが、昨日のステージです。僕は常々、常日頃から言ってることなんですけど、ライヴっていうのは生ものです。なんで、周りが予定調和でやろうとも、僕自身、己自信がギリギリまで詰めてやりたい。だからステージがすべてです。舞台上がすべてです。僕が生きること、すべてステージを見れば、誰でもわかる。これ以上のものがあれば、ぜひ、教えていただきたい。

ーー本当に、呼詩さんは唯一無二のひとだと思います。今回の作品は呼詩さんがプロデューサーのようなかたちで作られたんですよね?

呼詩 : 僕は、「ビアトムンフラワー」というものを作る段階で、メンバー全員に「次のパラダイスが向かうべき先はどこか?」と聞きました。出てきません。「呼詩がやってくれ」と。じゃあ僕は、この作品に関して言えば、この大日本帝国国家が、どういう状況で、どういう大人像、若者像があって、僕なりに、少なからず毎日勉強しました。すると、世界中を見渡しても天皇制という設定がまずないんですよ。日本だけじゃないですか。なんでそれが必要なのか、僕は、死ぬほど、ずっと、毎日毎日毎日考え続けて。

ーーはい。

呼詩 : そこに、日本の本質、精神性、現状が反映されてると、すべて現れてる状態だと思ったんです。僕は、その設定自体、小学生のときから疑問でした。小学校4年生のとき、僕は1年間学校に行ってませんでした。授業を受けませんでした。先生が言ってることの意味がわかりませんでした。で、こういう現状があって、必ずその現状に必要だったものが何かある。必ず必要だったものがある。

ーーそれが現代の社会にどうつながってきてるんですか?

呼詩 : だから、実際に変わってないじゃん、現状は。神聖不可侵な存在っていうのは、もう法律でそうなってるじゃないですか。だから、僕は表現という、自己表現というかたちですべて示す必要があると。必ず示す必要があると感じました。それで、「現在先行形」を作るうえで、半年以上ずっと、2日に一回吐いて、吐いて、表現ってなんなのか? 表現者ってなんなのか? 考え続けました。

ーーあぁ、なるほど、天皇制に対する疑問をぶちまけたのが「現在先行形」であり、ひいてはこのアルバムであるということですね。

呼詩 : 単純に、僻地からきた、内地に殴り込みをかけにきた人間が、言いたいことを言いたいだけなんです。僕が言いたいことを言いたいだけなんです。でもぜんぶ口をふさがれ、メンバーにも「発言しないでくれ」って言われて。「ライヴも半分しか出ないでくれ」と。だから、いま僕はライヴで1曲しか出てません。1曲しか出させてもらってないんですよ。それは彼らの意思です。バンドの総意です。僕はバンドの総意がいちばんだと思ってます。帯文句もNGだって伏字で消されました。僕が思ってること、感じた疑問、それはNGで、放送禁止で。

ーーでもタブーな部分で、あまり誰も切り込まない部分に切り込んでいってるのが呼詩さんのすごいところだなって思います。そのうえで、自分が表現者である、アーティストであると自負するところがさすがだなって。

呼詩 : じゃあなんで言いたいこともいえない表現者、そんなんで何が表現者だ? と。そういうふうに僕は思うんですよ。僕は、顔を晒して全部、もう作品として昇華して、きっちりやりますよ。

それは、俺、一個人の怒りですよ。それを、俺表現者が昇華して、作ってんの

ーー呼詩さんをライヴに出さないことにしたっていうのは、なんかあったんですか?

関口 : いや、その、なんか考えさせられたことが… ライヴで1回…… 揉めたことがあって。で、まぁ1年半ぐらい前のときに、そうしようっていうふうに決まって。そこから、まぁ、やってきました。

ーーああ~。

関口 : でも、あんなふうには、あれ以上の表現はできないですから、まぁ僕も、何が正しくて何が悪いのかはよくわからないですし、ただでも、そういう… まぁ冷牟田さんと呼詩の話し合いのなかで決まったことなんですけど、僕たちはそれでいいというふうに。うん、同意したんですね。

ーーじゃあ「ビアトムンフラワー」という造語は…。

呼詩 : タイトルの話をしましょうか?「ビアトムンフラワー」これっていうのは、アレですよ、「原爆のポエム-原爆銃火『エノラゲイピカドン天皇陛下万歳ピカドン天皇皇太子の歌、支配』-」。要は僕は、原爆が、どういうふうに広島、長崎に落とされたか、あらゆる文献を探しました。でも、被害者のことしか載ってない。アメリカ軍の話がない。全然ない。でもある古本屋があったんです。そこに、50円で雑誌が置いてあった。そこで「原爆の事実・現状」っていうタイトルのボロい雑誌を買ったんです。そこに、あまりに悲惨な状況が映し出されて、しかも、唯一1ページだけ、アメリカからの視点の文章が載ってたの。原爆って誰が落としたか知ってますか?
関口 : マッカーサー?
呼詩 : マッカーサーじゃねえよ、エノラゲイだ。その集合写真が載ってんだよ、「俺らが原爆落とした」って。笑ってんだよ。俺はそれを見て、これは俺への啓示だと思って受け取って。彼らはおもしろがってるんですよ。要は、仕事のひとつとして落としたんですよ。俺はそれ見て愕然としました。なんでそのことについて誰も何も言わないか。これは言わないといけないだろう。なんでいまだにアメリカが日本に駐屯して、アメリカにものが言えない? そっから端を発してるんですよ。だから僕はそういう点で、原爆ということを、「ビアトムンフラワー」アトム、原子ですね。そういうところから来てるんですよ。

ーーなるほど。

呼詩 : 僕は閉鎖病棟でその文章を読んでました。その写真をみて、アメリカ軍がにこやかに笑ってるのを見て「クソ野郎!」と思いました。思わないやついないじゃないですか。それは、俺、一個人の怒りですよ。それを、俺表現者が昇華して、作ってんの。原義がそこにあって、そういう… まぁ流れです。だから伏字にされるべきは、帯ではなく、「ビアトムンフラワー」という言葉自体ですよ。僕から言わせてもらえば。
関口 : 「ビアトムンフラワー」は「現在先行形」につながるものだと思うんで、結局そういうことだと思います。「現在先行形」が、アルバムの大半の意味を担っている。だから呼詩は良くも悪くもこれにすごく力を注いだわけで、結果的にいいものになってるし、誰が見ても呼詩のアルバムだっていうのは分かると思うし、もちろん呼詩がやる方がすごいと思ったからまかせたんですけど、でもそれを、本当に彼が望んでやったっていうわけでもないから、まぁ相当しんどいことであって…。だから、このアルバムに関してはもう他に言うことはないですね。呼詩ががんばったから。呼詩の力でこうなった。だから、指揮者ですね、呼詩は。

パラダイスがなくなったら音楽はやりませんし、できないと思うんです

ーー呼詩さんが、この作品のなかで、みんながタブーとするところに踏み込もうとしたのはどういう理由で?

呼詩 : まぁだからガキがおぎゃーって生まれるのと一緒なんです。ガキはなんでも正直に言うじゃないですか。僕ガキなんです。ガキんちょで、ド田舎のいなかもんで、そういうもんなんです。だから、僕は押し付けがましいアルバムにはしてないんです。

ーー確かにこの作品は、直接的な言葉でわかりやすく説明するっていうよりも、音とか、曲の構成とか、曲順とか、そういうすべてのことで、いま自分が考えてることをぶちまけようとしてるんだなっていうのはわかるんです。それが、この作品のすごいところで。

呼詩 : まぁ、これは皆さんわからないと思うんですが、アルフォンス・イノウエさんの絵を使って、CDジャケットの裏がこの絵っていうのは、実は、知ってるひとはわかると思うんですが、ジャン・カスーの翻訳本で、生田耕作さんが初めてアルフォンス・イノウエさんに依頼した作品のなかで、メインで使われてる絵なんですよ。彼は裁判沙汰になったんです。『バイロス画集』、ワイセツではなく芸術何が悪いって。で、裁判になって、京大締め出されたんです。で、そういう絵なんです、実は。そういう裏もあるんです。なんでこの絵を使ってる。でも単にみんなに「綺麗だ」って思ってもらえばいいだけで。でも分かってくれるひとは分かる。だから、文学とか、もう音楽を超えたところで。

ーーあ~、なるほど。先ほど「僕はガキだから」とおっしゃったんですけど、でも呼詩さんは口でそういうことを言ってるだけで、本当はそんな、衝動的なところだけで作品をつくってるわけじゃないと思うんですよね。

呼詩 : あー、僕は、あの、簡単にサラッとみんなに言いますよ。でも、その、裏打ちされた時間のかけ方って半端ないんですよ。ものすっごく、このコンセプトであるとか、そういったものを考えますよ。このタイトルの造語にしても、帯にしても、じゃあどうやって出すべきか、すごく悩んだんです。まず、1曲目ぐらいからゆるい感じでやって、で、フェイクで構成曲にして。だから、いきなり「現在先行形」が構成曲になったらおかしいから、そうやって目くらましにして。

ーー「現在先行形」をこのかたちでリリースするために尽力したんですね。

呼詩 : だから、三重ぐらいにフェイクを入れた。そうじゃないと、出せないって思ったんで。実は15分ぐらい聴かないとヤバイ部分がわからないっていうところで、僕は1曲にまとめたんです。いきなり出すんじゃなくって。だから、帯が伏字になるっていうのも、想定にはあったんです。で、そっちが消されれば…。

ーーいちばん大事な部分は見えなくなるけど、買った人はちゃんとわかるっていう。

呼詩 : そうそうそう。だから、帯を犠牲にさせておいて、中身でちゃんと言いたいことを言ったんです。だから、いろいろ悪ぶったり、アンチなことを言ってるやつら、ロック・バンド山ほどいますが、これ以上勝てるかっていったら、まぁ一発でわかると思うんです。

ーーそうですね。こんなヤバイことなかなか言えませんよね。

呼詩 : だから、僕はステージで言ったんです。「過去10年間、20年間のスパンで、これ以上ヤバイもんは絶対誰にも作れねぇ」って。そういう確信があったんです。

ーーその上で、ステージ上で「自分はアーティスト」って自分を追い込むっていうのは、やっぱりステージに立って表現する人間であるという覚悟があるなぁって思ったんです。

呼詩 : だから、大きなものと戦うために、やっぱり細心の注意を何重も考えなければいけない。それは、出す前からわかってたんです。だから、これがもっと話題になったら、たぶん発禁になる。やっぱり僕、閉鎖病棟から出てきて、生きるか死ぬかずっと考えてたところで、もう、どうするかっていって、確かに僕は何にもできません。ギターも弾けません、楽器は弾けません、でも、全部、ビジュアルを含めて、アルバムを通してぜんぶ僕のことなんですよ。だから、今まで無視してきたやつらが、無視できないような作品をつくりたかった。

ーーまぁ、いまの時代にこんなにセンセーショナルなバンドっていないですよね。

呼詩 : だから、それは僕自身ですよね。まぁ僕は、パラダイスしかないですし、パラダイスがなくなったら音楽はやりませんし、できないと思うんです。だからこそ真剣になるんです。だからこそ、なんですかわからないですが、あの、つまり、三島が割腹自殺しました。あれは、彼が唯一残したことは、三島って、その現象として何なのかっていうと、彼が最後に言った「魂が死んでも生きてるって言えるのか?」って言って、最後に割腹自殺するんです。すごいストレートな言葉だなぁと思って。三島はすごく文章を構築してる人間だけど、最後にそんなにストレートな言葉を残したっていうのが、やっぱりグッとくるんです。だから、バンドってやっぱりインパクトじゃないですか。現象じゃないですか。だから結局、大々的なセンセーショナルなことを、残していきたい。それで若干引く人もいますが、そこでしか、どうしようもないっていうか、どうしようもない表現をしたい。

>>>冷牟田敬×関口萌へのインタヴューはこちら

>>>メンバーによるセルフ・レビュー&コメントはこちら

PROFILE

Paradise
2000年代伝説のバンド、Mokixxを母体に2006年より活動開始。2010年アルバム『Alcohol River』、2011年2枚組アルバム『N'importe ou hors du monde』、同年4曲入りシングル『Blue devil, Baby evil』を発表。2012年、新ベーシスト瀬尾マリナ(咽笛チェインソ〜BARAMON)加入。圧倒的に不穏な雰囲気を漂わせ、死者の世界までもを求める彷徨詩人にして神秘への憧憬を歌う稀有なボーカリスト呼詩を中心に、(昆虫キッズや豊田道倫理&mtvバンドでも活躍する)冷牟田王子のギターは触れば切れんばかりの鋭く尖った光を放ち、Mokixx時代からの盟友、ドラマー関口萌は現在活動中のアンダーボーイズでおなじみのポップな面をこのバンドに持ちこみ、ヴォイスパフォーマーとしても知られるベーシスト瀬尾マリナが新たな色を加える、Paradiseはこの4人が奏でるどこまでも独創的で屹立した美しさを魅せる覚醒ロック・バンドだ。

Mokixx
全身全霊稀代のボーカリストこうた(現・宮腰呼詩)とドラマー関口萌を中心にギタリスト冷牟田王子が加わり2004年から約3年活動したMokixx(正式名称 Nhisteer-theer-neats-mokixx-droogue)は、Paradiseの前身として知られるが、2006年12月24日(渋谷サイクロン)、その最後のライヴで販売された9曲入りCDRアルバム『ファーストラスト』が数人の手に渡り、このたった1枚の音源が今に至るまで噂が噂を呼んだ伝説のバンドである。

[インタヴュー] Paradise

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