PSI Audioのパワード・モニターA-17Mと組み合わせてみる
ところで、昨年の秋に僕のプライヴェート・スタジオには大きな変化があった。モニター・スピーカーを購入したのだ。PSI AudioのA-17Mというパワード・モニターだ。
PSI Audioというブランドは、日本ではまだあまり知られていないだろう。スイスのメーカーで、プロ用のモニター・スピーカーだけを作っている。四角い箱にユニットを装着しただけの、そっけないデザインのモデルばかりだが、近年、PSI Audioのモニターは世界中のプロ・スタジオでじわじわと評判を上げている。

僕がPSI Audioのモニターを使うのは、今回が初めてではない。実は一昨年からOTOTOYの「ハイレゾ試聴会」で使ってきたパワード・モニターがPSI Audio製だった。StuderブランドのA5というモデルだが、これはPSI AudioのOEMで、同社のA-25というモデルと同等なのだった。OTOTOYの常設機材にしてあるが、実は僕の私物で、サウンドもまさしく僕好み。僕はイギリスのATCのスピーカーを好んできたが、PSI Audio製品にはATCに通ずる質実剛健さがある。ゴリッとした低音の迫力は、ある意味、近年のATCよりもATCっぽいと言ってもいいかもしれない。しかし、帯域バランスは極めてフラットで、中低域の解像度が高いのは、現代のスピーカーらしい。

残念なことに、2020年はコロナ禍のせいで、「ハイレゾ試聴会」ができなくなった。OTOTOYに置きっぱなしのスピーカーの音は聴けていない。そんなこともあって、プライヴェート・スタジオ用にもう少し小さいサイズのPSI Audioのモニターが欲しくなったのだ。StuderのA5(PSI AudioのA25)は25センチ・ウーハーを積んだ3ウェイだったが、A-17Mは17センチのウーハーを積んだ2ウェイ。所謂ニアフィールド・モニターに最適のサイズだ。
スタジオのモニター・スピーカーは仕事道具であり、判断基準になるものだから、突然、スパッとは切り替えられない。20年以上、使い続けてきたATCのSCM10と併用しつつ、半年くらい慣らし運転を続けて、両者の違いを掴み、ようやくA-17Mだけでもミックスやマスタリングができるようになってきたところだ。