Keishi Tanaka × Ropes 対談──景色と音色を共有した合同ツアーからソウルフルなKeishi新作を巡って

2016年に入り、Tokyo Recordings、fox capture plan、LEARNERSと一緒に制作したシングル3部作をリリースしたKeishi Tanaka。意欲的に制作を続けるなか、待望のフル・アルバムが完成した。
学生時代のルーツと語るオールディーズなジャマイカ音楽の影響を感じさせる楽曲から自身が得意とする70年代ソウル・ミュージックをアップデートしたネオ・ソウル、サルソウル的なホーンフレーズとパーカッションが華やかに盛り上げるディスコ・チューン、ジャズ・テイストなポップ・ソングなど、幅広い音楽性を感じさせる本作。レコーディングには、小宮山純平(Dr)、LUCKY TAPES 田口恵人(Ba)、潮田雄一(G)、RIDDIMATES CrossYou(Sax)、Chan Keng(Tp)など、最近のライヴのサポート・メンバーをはじめ、松田"CHABE"岳二、fox capture planの岸本亮らが参加。様々な仲間と生み出した極上のグルーヴをコラージュした作品となっている。
なかでも収録されている「冬の青」は、2016年前半にツアーを共にしたRopesと、その旅の道中で制作されていったもの。アルバム制作中に特に親交を深めていた彼らを招いて対談を敢行した。
Keishi Tanaka / What's A Trunk?
【Track List】
01. What A Happy Day
02. Another Way (is so nice)
03. I Like It
04. Just A Side Of Love ※LEARNERS ゲスト&プロデュース参加
05. 真夜中の魚
06. Our Town
07. 透明色のクルージング ※fox capture plan ゲスト参加
08. 冬の青 ※Ropes ゲスト参加
09. Peaceful Christmas
10. Hello, New Kicks ※Tokyo Recordings アレンジメント担当
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 205円(税込) / アルバム 1,697円(税込)
アルバム購入特典として、2017年のカレンダー付きデジタル壁紙が付属!!
Keishi Tanaka - Another Way (is so nice)Keishi Tanaka - Another Way (is so nice)
対談 : Keishi Tanaka × Ropes(アチコ・戸高賢史)
2016年に"NEW KICKS"というテーマを掲げ、東京の音楽を刺激的に盛り上げている面々とコラボ・シングル3部作を展開してきたKeishi Tanaka。個性豊かなミュージシャンとの交流から、多彩なエッセンスを柔軟に吸収し表現の幅を広げてきた彼が、待望のサード・アルバム『What's A Trunk?』をリリースした。
その中に収められた「冬の青」は、ART-SCHOOLやMONOEYESで活躍するギタリスト戸高賢史と、くるりのコーラスなどで活躍するヴォーカリストAchicoによるユニット〈Ropes〉とのコラボによって生まれた1曲。2016年初頭にカップリング・ツアーを行なった両者は道中で親交を深めながら、旅の記憶を散りばめた新曲を完成させたのだった。今回、Keishi TanakaとRopesのトーク・セッションが実現。まるできょうだいのような仲の良さを見せる、和気藹々とした会話をどうぞ。
インタヴュー&文 : 宮内健
写真 : 大橋祐希
最初はとにかくそのバイタリティに圧倒されました

──そもそもKeishiくんとRopesの2人との出会いは、いつごろまで遡るんですか?
Keishi Tanaka(以下、Keishi) : 2011年に前のバンドが解散して、僕がソロ活動をはじめたんですけど、ほぼ初めてのライヴが同じ年の12月にリキッドルームであって。その時にRopesが対バンだったんですよね。Ropesも2011年に結成してからほぼほぼ初ライヴだったんですけど、楽屋に挨拶に行ったら2人がすげえ勢いで喧嘩してるんですよ。
戸高賢史(以下、戸高) : 結構本気のやつね(笑)。
Keishi : 僕もどうしていいかわかんないから「あ、どうも、失礼しまーす」みたいな感じで、そっとドアを閉めるっていう(笑)。
アチコ : 最初の頃はほとんど毎回喧嘩してたよね(笑)。
戸高 : 今は全然ないけどね。
Keishi : まあ最初はそんな出会いで。スタジオで会ったりしてる中で、セカンド・アルバムで結構な曲数をコーラスで参加してもらって。アチコさんとはそのアルバムの時にいろんな話をするようになって、2人で飲みに行ったりね。そんな中で「今度Ropesとツアーをしたい」って持ちかけて、それが今年2月に一緒にツアーを回って。同時期にアルバムも動き出した感じなんです。
──アチコさんは、Keishiくんに対してはどんな印象を持ってましたか?
アチコ : 最初の頃の印象はとにかく無邪気で快活な人。Keishiくんの歌も尊敬してるし、ソロ始めてカッコイイなって思ってたんですけど、本当にそれぐらいの印象のままコーラスで参加するようになって。一緒にやるようになってから、さらに彼の人となりを知っていくことになるんですけどね。
戸高 : 俺はもともと彼がやってたRiddim Saunterのことも知ってたので。
Keishi : そうそう。トディくんとのはじめましては、もっと前だ! ART-SCHOOLとRiddim Saunterで対バンしてるもんね。
戸高 : 最初の頃の印象は、やっぱり好青年だよね。
アチコ : そうそう、好青年!
Keishi : 最初はそう言ってくれてましたけど、知れば知るほど……。
戸高 : ダメでしたね(笑)。でも、同じ歳ってこともあって、すぐにシンパシーを覚えました。
──Keishiくんのセカンド・アルバムでは、アチコさんにどのように関わってもらったんですか?
Keishi : ファースト・アルバムでは僕が全部自分の声でコーラスを重ねるって決めてて。本来だったら女性コーラスで入れるべきところも、ハーモニーは1人で完結させる作品を作りたかったんです。それを経て、セカンドでは全部自分の声でやるっていうコンセプトを無くして、裏声だった部分を女性コーラスにしたいと思って、アチコさんに頼んだんです。アチコさんがすごいなと思ったのは、曲についていろいろ訊いてくれるんです。たとえば「この曲はどういう女性コーラスのイメージ?」って訊かれて、「この曲はソウルなので、黒人3人のコーラスグループが踊りながら歌ってるイメージです」って伝えると、「わかりました」って、いくつか歌い方やハモりを提案してくれて。何テイクか回して「さっきの感じですね」って言うと、その通りにやってくれる。すごく助かりましたね。
アチコ : (照れた様子で)いやいや。
Keishi : ヴォーカリストとしてもとても素晴らしいから誘ってるんですけど、ヴォーカリストとコーラスって、また微妙に違うと思ってて。アチコさんは、そのどちらもこなせるから器用だなって思いました。自分に置き換えたら、僕はそれが出来るかな? って考えたりして。アチコさんはコーラスとしてもいろんなアーティストのサポートをやってる人だから、そういうスキルはやりながら身についていったんだろうなと思いますね。僕よりも声のことを研究してる感じもしましたし。
アチコ : ヴォーカルやる時とコーラスやる時って違いますね。コーラスは、呼んでくれた人の曲の中に出てくる「何か」になるっていう気持ちでやってて。どういう「何か」が出てきたら素敵なのかなって考えながらコミュニケーションをとってやったほうが楽しいですね。
Keishi : そうやって楽しんでやってくれてるのが嬉しい。ただ言われたことをやってるだけっていう、仕事的な感じも無いし。一緒に作りましょうっていう感覚が伝わってくるのが嬉しいんですよね。
──アチコさんから見て、Keishiくんが作る楽曲はどんな魅力がありますか?
アチコ : 自分も学生時代に聴いてたルーツミュージックとか、そういう部分でのシンパシーもありつつ、メロディも美しくて高揚感があって好きです。アレンジに関しても、こんなに忙しく過ごしている中で曲を作って、1人でよく集中して判断して編まれているなって思いますね。最初はとにかくそのバイタリティに圧倒されました。そんな人が誘ってくれたんだから、こちらも気持ちはガッツリ楽しんで参加して、Keishiくんにも楽しんでもらいたいと思いました。Keishiくんの活動を見ているとこちらまでパワーを貰える。そういう音楽を作ってる人なんだなって思います。
Keishi : そう言ってもらえて嬉しいです。
アチコ : Keishiくんはやりたいことがはっきりしてて、すごくよく伝わってくる。かなりの広範囲でヴィジョンをしっかり持ってやってるのはすごいなって思います。
車の中で曲ができていく感じは、ツアー中のハイライトでしたね。Ropesとやるってことで出てきた曲だから

──その後、2016年初頭にKeishiくんとRopesとのカップリング・ツアーが行われたわけですが、本数は何本ぐらい回ったんですか?
アチコ : 11本ですね。
戸高 : あれはおもしろかったよねー。
アチコ : 最初にみんなで車に乗り込んだ時からすごくおもしろかった(笑)。
Keishi : 僕の記憶では、アチコさんとの会話の中で「Ropesでは、あんまりツアーできないんですよ」みたいなことをポロっと言ってたのを覚えてて。僕はツアーをたくさんするし、たまたまお互いに近い時期にリリースがあったから、カップリング・ツアーみたいなのができないかなって思ったんです。「車移動とかどうやったらいいかわかんない」みたいなことを言ってたので、それがクリアできたらツアーやりたいのかなって感じて。「だったらすぐできますよ! 僕と一度、一緒に回りません?」って提案して。十何本もずっと一緒に過ごすツアーって、普通はかなり仲良くないとできないけど、なんかRopesとは上手くいく自信があったんですよね。仲良くなれるのもそうだし、このツアーが成功するっていうのも見えていたから誘ってみたんです。
戸高 : 俺たちはとにかく腰が重いので(笑)、乗せてってくれるの? みたいな。
Keishi : トディくんはART-SCHOOLやMONOEYESでもツアーしてるし、アチコさんも他のバンドに参加してるからツアー自体はやってるのに、Ropesではやってなかったていうね。
アチコ : 単純に機動力の問題もありますし(笑)、どうやって会場を押さえたりしたらいいのかわからなかったから。それに地元とのつながりもそんなになかったので、何からやっていいかわかんない。だけど、私は自分のやってるバンドでツアーをいっぱいやるっていうのは夢としてあって。そこにKeishiくんが「やりましょうよ!」って言ってくれて。
Keishi : 半ば強引に誘うぐらいでもいいかなって思ってたんですけどね(笑)。もちろん僕のツアーをサポートしてもらう気もなかったし、出る順番も公演ごとに入れ替えていってもいいなって思ってたし。僕が行きたいところに行くというよりは、Ropesとしてどこに行きたいかっていう話も最初にして。「この街だったら協力してくれる人がいる」とか「ここはお互いに行ったことないからやってみましょう」とか、お互いに半々ぐらいで出し合って。スプリット・ツアーって、そういうのが醍醐味だなって思いますからね。だから、スプリット・ツアーのいいところが存分に出たって感じでしたね。
戸高 : いろんなツアーをやってきたけど、あれは今までにない感覚でしたね。
──たとえばどんなところが今までと違う印象を覚えたんですか?
戸高 : なんですかね。人とのつながりが密な感じというか。アコースティック編成だったので、カフェみたいなあまり大きくない会場も多かったんですけど、そこのカフェのコーヒーがすごく美味しかったり、マスターが素敵だったり。また個人的にも遊びに来たいなってぐらいに、その街のことが好きになるような。そういうツアーでしたね。観に来てくれたお客さんも、「初めて来たけどこの空間が好きになりました」とか言ってくれたり。
Keishi : そういうところがアコースティック・ツアーの最高なところですよね。僕も弾き語りをやりはじめた頃に思ったけど、全体的な距離感とか、お客さんと話すことがテーマだったり。それをこのツアーでも自然に出来た。
戸高 : 厨房の奥にある店員さんの休憩室みたいなところが楽屋だったりしてね(笑)。
アチコ : お料理してる横で座ってたりしたよね。会場がライヴハウスじゃないので、たとえば窓を背に演奏したり、その街の景色を借りてライヴができるのがすごく楽しかったです。車がサーッて通る音とか、雨に濡れた地面に信号の灯りが反射してたり。
Keishi : その場所ごとで、聴きなれてるはずの歌も特別になりますよね。
戸高 : そういうヴァイブスの中で、一緒に曲やる? みたいな感じになったんだよね。Keishiくんがなんか、ツアー中に新曲を作りはじめたりしてね。結果的にそれが、今回のアルバムでRopesが参加してる曲になるんですけど。
Keishi : ツアー用に新曲を作りたいって思い立ったのがツアー初日の3日前ぐらいで。できるかなと思ったけど、全然完成せず。初日の段階では、Aメロしかできなかったんです。でもなんかおもしろいかなと思って、Aメロだけやったんですよ。30秒ぐらい演奏して「~みたいな」って終わるっていう(笑)。初日が神奈川県の湘南で、最終日が横浜だったんですけど、「帰ってくるまでに完成させます!」って言って自分を追い込みつつ、ツアー回りながら曲の続きも書きつつ。
──ツアーで旅しながら曲を作っていくっておもしろいですね。
Keishi : この曲はRopesとのツアーのことを歌詞に盛り込もうってなんとなく考えてて。2人を観察して作ってやろうって思ってたんです。その時点ではRopesにオファーしてなかったけど、最終日には2人に参加してらもらおうと思ってました。でもまだそれは言わない…… みたいな、イメージを膨らませている感じだったんです。どこのタイミングで言おうかなって探りつつ、3日目ぐらいにはだいたい曲の構成も決まって、でも歌詞は毎日変わって。水戸で見たことを織り交ぜてみたり、ある日のアチコさんの言葉を入れてみたり。そういうので曲ができたらいいなっていうので作っていって。残り3本ぐらいになった時に、Ropesの2人と一緒にやりたいって打ち明けて。僕のズルいところなんですけど「もちろん、やろうよ!」って言ってくれるところまで我慢しました。
アチコ : あははは(笑)。
戸高 : そうしたらやらざるを得ないですよね(笑)。なかなかの策士だよ。
アチコ : 車の中でKeishiくんがギターを取り出して、「トディくん、これさ…」ってギターを弾いてみせて。トディも「こう?」ってギターを取り出して、音を合わせはじめたりしてね。そういうやりとりが車で移動の中ではじまって。2人の距離も、波長もどんどん近づいていってね(笑)。
Keishi : 車の中で曲ができていく感じは、ツアー中のハイライトでしたね。ひとつのツアーで作っていくってことをやったことなかったし、Ropesとやるってことで出てきた曲だから。これが1人だったら、あんなに楽しんでできなかったと思う。
──また車の中っていうシチュエーションがいいですよね。
アチコ : 四国のあたりだったかな? 2人が並んでギターを弾いてる時に、ちょうど橋を渡って、海が見えて。あの光景が思い出に残ってますね。
Keishi : 席順を説明しますと、バンドワゴンの2列目に僕とトディくんが座って、アチコさんは後ろの席から2人の間にちょこんと顔だけ出してね。途中で「今のよかったよね!」とか言ってくれたりして。あの感じがすごく楽しかったんですよね。
──もう、その時の映像が浮かんできそうです(笑)。
Keishi : 僕的にはRopesって姉ちゃんと弟みたいな関係に見えて。その兄弟の中に入れてもらった、近所の従兄弟みたいな(笑)。
戸高 : 僕はエレキギターだから生音だと全然聞こえないんで、小っちゃなアンプに差して弾いて。Keishiくんのテンションが結構高いんで、「今日飛び込みでやっちゃう?」みたいに匂いをプンプンさせてくるから。そろそろ弾かなきゃいけないっていう予感を感じつつね。
Keishi : 車の中で光景で思い出したことあるんですけど、移動中に別件で電話がかかってきたんです。僕が電話に対応してる時に、トディくんがその曲をギター弾きながら歌い出して。それも僕が電話してるのを邪魔するように、ふざけて耳元で歌ってきたりして。
アチコ : どんどん仲良くなってるなーって、私は後ろから眺めながら動画撮ってました(笑)。ちょっとずつ2人の掛け合いとか関係性が変わってきて、すごくトディも嬉しそうだし、よかったなって思いながらね(笑)。
Keishi : お姉ちゃん目線だ(笑)。
俺たちのことを歌ってくれるのはわかってたんで、少しくすぐったい感じもありつつ、やっぱり嬉しかったですよね

──一緒にツアー回ったことで、Ropesの活動にも変化はありましたか?
戸高 : ありますね。もっとフットワーク軽くてもいいんだって気付かされたり。俺たち、ちょっと腰が重すぎたかもって反省しました。
アチコ : トディと2人でたくさんツアーに行くっていうのが最初じゃなくて、Keishiくんと3人で行けたのがよかったよね。
Keishi : メンバー2人だけだと照れもあるっていうのはわかるんですよ。だから僕は僕で、アチコさんじゃないけど2人の間にひょこっと顔出す役でもあり、僕とアチコさんが2人で歌ってるとトディくんがひょこって顔出したり。そんな感じで、いい関係ができたなって思いますね。
──理想的な3人旅ですね(笑)。
アチコ : そうそう。いつもスタジオに入ったりライヴやるのは2人きりなので、こういう風にKeishiくんとツアーをしてみて、自分もよく知らなかったトディの新しい一面が見られたりね。スプリット・ツアーの素敵な部分だなって思いました。Keishiくんもトディもバンドでツアーをやってきたからすでに知っている感覚かもしれないけど、Ropesにとって初めての長いツアーをKeishiくんとやれて本当によかったと思いました。
Keishi : ツアー自体も、この3人はもちろんスタッフやお店の人も含めて、みんなで一緒に作った感じはありますね。会場ごとにステージや座席のレイアウトも、お店の人と一緒に相談しながら作っていったり。
戸高 : お互いの外音をチェックしあったりね。
──そうやってツアーのON/OFFを含めて感じあったことが、今回のコラボ曲「冬の青」にも反映されていったわけですね。
Keishi : アルバムにはバンドセットでやってる曲もあるけど、この曲に関してはRopesとやってる感じを出したかったんで、基本的には打ち込みにしようと共通の友人でもあるMU-STARSの(藤原)大輔さんに頼んで。横浜のファイナルでやったことを、できるだけ残したいなと思って、こんな感じになりました。
──曲の中に込めた、さりげないこだわりみたいなところはありますか?
Keishi : 歌詞の中でsisterとbrotherってワードが出てくるんですけど、これはRopesに「sister and brother」って曲があって。僕がその曲が好きなんで盛り込んでみたいんですけど、リハでやった時にアチコさんがすぐ気付いてくれましたよね。
アチコ : 街で見たものや話で聞いたことが、その日だけの「冬の青」の歌詞になっていくんですけど、ある日のライヴで「sister」と「brother」という言葉が入ってて。気づいた時、「自分たち入ってきた!」って、すごく嬉しかったな。
戸高 : 俺たちのことを歌ってくれるのはわかってたんで、少しくすぐったい感じもありつつ、やっぱり嬉しかったですよね。
──サウンド面については?
Keishi : 曲自体はアコギのカッティングが最初からあって、ちょっとループものっぽい感じで進めようかなと思ってたぐらいで、あとは勝手に転がっていきましたね。ライヴで作ってるから、あまり考え込んで完成させるというよりは、鼻歌の延長に近い感じというか。
戸高 : ギターのダビングも、わりと即興的な部分も多いかもしれないですね。
Keishi : Ropesのレコーディングでもそうらしいんですけど、トディくんが何気なく弾くメロディとかフレーズがよくて、それを覚えて「あの時のリハで2回目に弾いたやつ」とかお願いして。だいたい「どれ? これ?」みたいになるんですけど。
戸高 : だから俺もリハーサルの時は、すぐに録音できる状態にして(笑)。自分的にはなんとも思ってないフレーズだったりするのが、意外とそれいいとか言われるから。
アチコ : そんなやりとりを車の中でもやってたよね。トディはいい音をいっぱい出すんですよね。
──歌詞にしてもサウンドにしても、いろんな場面の記憶をつなぎ合わせて作り上げた曲なんですね。
Keishi : だから、この曲を聴けばあの時のツアーを思い出すような曲になればいいなって思ったし、実際にそうなってると思います。ツアー自体も冬に回ってたんですけど、それとはまた別に僕の中にあるRopesのイメージが冬と青で。「冬」「青」「Ropes」ってテーマをもとにして、それ意外のことは記憶のフラッシュバックみたいな感じですね。
ライヴをやりながらのほうが、メンバーとの関係性も深くなると思って、あえてこういう作り方にしたんです

──おふたりはアルバム『What's A Trunk?』もお聴きになられてると思いますが、どんな感想を持ちましたか?
アチコ : 私はコーラスで参加させてもらったこともあって、Ropesのコラボ曲以外も先に聴いていたけど、Keishiくんは常にライヴやって、並行してみんなとレコーディング・セッションしてってことをずっと繰り返してきたんですよね。めまぐるしい毎日とコラボレーションの中で、全体的にはもちろん、ディティールについても一人でフォーカスして録り進めてるのですごいですよね。私はあんなに広範囲に集中力が持たない(笑)。曲ごとにミュージシャンと共有した記憶が、すごく深い部分までKeishiくんと曲に染み込んでいると感じました。その記憶の深さも、スピーディでありながら高いクオリティで制作を進められた秘訣なんだなって思いました。
──それもツアーを挟みながらの制作でしたからね。
Keishi : 今回のアルバムは、今までで1番メンバーを固定して作ったんです。前作まではこの曲は誰にドラムを叩いてほしいとか、曲ごとにイメージした人に参加してもらうのをソロならではの楽しみとして味わってたんですけど、、今回に関してはシングルで出したコラボ曲以外ではバンド・アレンジにこだわっていて。だからライヴをやりながらのほうが、メンバーとの関係性も深くなると思って、あえてこういう作り方にしたんです。
アチコ : なるほどね。
──シングルとしてリリースされた曲も、それぞれ雰囲気もスタイルも全然違うのに、アルバムで聴くと自然としっくりくるのがおもしろいですよね。
Keishi : まさにそれで。シングルがパンチある特徴的な3曲ができたなと思うので、それをアルバムに入れる時にはコラージュしたような感覚になると制作前から思っていました。あえてコラージュ感を出して、だけどちゃんとアルバム通して聴けるものにするっていう。なんでそう聴けるのかっていうのを、自分でも探りながら作っていったのが今作のこだわりです。
アチコ : Keishiくんがこれまでの作品で出会ってきた人たちとバンドでやったりプロデュースしてもらったり、フィーチャリングしたり。コラージュ感はあっても、そこまでに培ってきた物語がしっかりしてるから、すごく一貫して聴けて、本当にかっこいい作品だなって思います。
Keishi : ありがとうございます! トディくんはどうですか? 良いよ正直に言って(笑)。
戸高 : 自信を持ってやってる感覚が、すごく勇敢に感じて。俺はそれが好き。
アチコ : そう! トディ、簡潔にいいこと言った!
戸高 : 堂々とやってるのって、カッコイイよね。Keishi Tanakaは清々しくて気持ちがいい。これに尽きる。それはツアーやってる時から思ってたけど、そういうところは見習いたいなって思いますね。
Keishi : 男らしい人たちと一緒にバンドやってるトディくんにそう言われるのは嬉しいな。
──来年はまたカップリングでツアーに回るそうですが、RopesのおふたりからKeishiくんにどう進んでいってほしいと思いますか?
戸高 : そんな、僕らが上から言えるような立場じゃないですよ!
アチコ : むしろ結構見習ってるところはあって。Keishiくんがひとりでギター持って歌いはじめたところから会ってるから、最近自分もギターをはじめてみたりね。
戸高 : アチコも弾き語り少しずつはじめてるんだよね。
アチコ : 今まで楽器を弾きながら歌うってことをしたことがなくて。でも、私も何か挑戦したいなって思って。それはKeishiくんとセカンドあたりから徐々にできていった関係性の中で、影響を受けてやりたいなって思ったこと。
Keishi : おー、これはいい話だ! これぞまさに「New Kicks」ですね。
LIVE INFORMATION
Keishi Tanaka Release Tour "What's A Trunk?"
2016年12月1日(木)@横浜 THUMBS UP
GUEST : LUCKY TAPES
2016年12月2日(金)@水戸 mito LIGHT HOUSE
GUEST : inweu
2016年12月8日(木)@名古屋 TOKUZO
2016年12月9日(金)@長野 the Venue
GUEST : CICADA
2017年1月15日(土)@宇都宮 HELLO DOLLY
GUEST : Someday's Gone / and more
2017年1月19日(木)@神戸 THE GARDEN PLACE SOSHUEN
2017年1月20日(金)@松山 コスモシアター
GUEST : Ropes
2017年1月21日(土)@福岡 住吉神社能楽殿
GUEST : Ropes
2017年1月22日(日)@広島県 会場未定
GUEST : Ropes
2017年1月27日(金)@仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
GUEST : the band apart (naked)
2017年1月28日(土)@盛岡 the five morioka
GUEST : the band apart (naked)
2017年1月29日(日)@郡山 PEAK ACTION
GUEST : the band apart (naked)
2017年2月4日(土)Music Club JANUS
・Afternoon Show(ストリング・セット / 座席指定・お食事付き)
OPEN 13:30 / START 14:00
・Night Show(バンド・セット / オール・スタンディング)
OPEN 19:00 / START 20:00
2017年2月19日(日)よみうり大手町ホール(バンド・セット / ゲスト有り)
OPEN 17:15 / START 18:00
配信中の過去作品
PROFILE
Keishi Tanaka
Riddim Saunter解散後、ソロとして活動をスタート。2015年までに、『Fill』と『Alley』のフル・アルバム2枚の他、詩と写真で構成された6曲入りソングブック『夜の終わり』や、絵本『秘密の森』など、自身の世界観を表現する多様な作品をリリースしている。最大 10人編成で行われるバンド・セットを中心に、ピアノ・デュオや1人での弾き語りなど、場所や聴く人を限定しないスタイルで活動中。自主企画として"NEW KICKS"と"ROOMS"を不定期に開催。
2016年にはシングル3部作として、1月に『Hello, New Kicks』、5月にfox capture planとのコラボ EP『透明色のクルージング』、さらに7月はLEARNERSをゲストに迎えた『Just A Side Of Love / 恋のすぐそばで』を立て続けにリリース。4月にはビルボードのステージに立つなどして注目を集めている。
Ropes
アチコ(Vocal)と戸高賢史(Gt)によるアブストラクトなユニット。
2011年、前身バンドKARENの解散後、Ropesを結成。FLAKE RECORDSより単独音源『SLOW/LASTDAY』を7インチのみでリリース。2012年はOWENやThao and Mirah、Mount Eerie & Tenniscoatsらのジャパン・ツアーのサポート・アクトを務め、2013年に以前より交流のあったロック・バンド、LOSTAGEのメンバー運営によるTHROAT RECORDSから、待望の全国流通のミニ・アルバムをリリース。2015年8月に初のフル・アルバム『dialogue』をリリースし、梅田Shangri-La、渋谷WWWにてリリース・パーティーを開催。その後、初の11か所ツアーをKeishi Tanakaと巡り、各地満員御礼にて無事旅を終える。