これはくるりが"ジャズ"で表現した日本の民謡? 高橋留美子原作アニメ『境界のRINNE』EDテーマ含む新シングル、ハイレゾ配信

現在NHK Eテレにて放送中のアニメ『境界のRINNE』のエンディング・テーマであるくるりの新曲「ふたつの世界」。メンバーがアニメ原作を読み込んで、登場人物2人の恋心をテーマに書き下ろされた同曲。今回のシングル・リリースにおいては現在TVで流れている「ふたつの世界 TV ver.」のみならず、「ふたつの世界 Bebop ver.」、「ふたつの世界 Chamber ver.」の合計3ヴァージョンと、それぞれのインストゥルメンタルも収録。くるりの音楽性の幅広さもじっくり味わうことが出来る内容に仕上がっている。OTOTOYでは今作もハイレゾで配信。くるりの音にワクワクしたいならやっぱりハイレゾで。金子厚武のレヴューとともにどうぞ。
くるり / ふたつの世界
【Track List】
01. ふたつの世界 TV ver.
02. ふたつの世界 TV ver. -instrumental-
03. ふたつの世界 Bebop ver.
04. ふたつの世界 Bebop ver. -instrumental-
05. ふたつの世界 Chamber ver.
06. ふたつの世界 Chamber ver. -instrumental-
【配信形態】
24bit/48kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
※ファイル形式について
※ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 540円(税込) / アルバム 1,500円(税込)
REVIEW : くるり『ふたつの世界』
今年もまた、京都音楽博覧会の季節がやってきた。僕は昨年初めて参加させてもらったのだが、ゆったりと自由に音楽を楽しむ独自の磁場がすでにしっかりと形成されていて、誰が言い出したのかは知らないが、「フェス戦争」なんていう言葉とは無縁の空間が、そこには確かに広がっていた。今年の出演は、ブラジル録音の新作が素晴らしかった高野寛、若手バンドの中ではミュージシャンシップの高さとポップスへの愛情の強さにおいて異彩を放つindigo la End、THE BAWDIESらが楽曲提供をしたブルース・アルバムが話題の八代亜紀、ヒックスヴィルの真城めぐみと中森泰弘、真島昌利が結成したましまろ、最終発表で追加された木村カエラという日本勢に加え、ロンドンを拠点に活動する25歳のヴォーカリストにしてマルチ・インストゥルメンタリストのコスモ・シェルドレイク、ブラジルはミナスのシーンを代表するアントニオ・ロウレイロという海外からの2組が参加する。
そして、音博の開催直前に発表されるニュー・シングルが、『ふたつの世界』である。資料には〈「Liberty&Gravity」の複雑怪奇なアンサンブル。「さよならリグレット」のエレガントさ。「ワールズエンド・スーパーノヴァ」の電子音。「ばらの花」の胸キュン度合い。「ワンダーフォーゲル」の多幸感。これら、全て兼ね備えた恐るべき、とんでもない曲が完成! 〉という、これこそとんでもないキャッチコピーが躍っているが、まあこれはご愛嬌。ただ、いわゆる「まとめサイト」に対して「表面的で安易だ」と毒づくのではなく、あえてそこに乗っかって遊んでみたかのような今回のコピーは、「岸田日記」における真面目な文章の間に挿入される美味しそうな食べ物の写真同様、情報社会におけるバランスの取り方が非常に上手いなーと、改めて感心したりも。
さて、肝心の楽曲はといえば、木琴による愛らしいイントロから導かれる、三柴理のピアノを基調に、今年のライヴのサポート・メンバーでもある松本大樹のバンジョーや、mabanuaによるビートが軽快な曲調を盛り上げ、くるり流のジャジーなポップスに仕上がっている。イントロで一瞬現れる「Be My Baby」風のリズムや、間奏でマーチングドラムと共にこちらも一瞬だけ現れるコーラス・パートなど、曲展開は複雑だし、〈「ワールズエンド・スーパーノヴァ」の~〉というよりは、「ワンダーフォーゲル」を連想させる電子音も含まれていたりと、内包する情報量の多さは〈「Liberty&Gravity」以降〉とも言えるが、本作において重要なのは、ジャズを基調としていることであるように思う。昨年の音博における「音博遊覧飛行」で、サラーム海上氏がアルメニア出身のジャズ・ピアニスト、ティグラン・ハマシアンを紹介し、「今世界の各地でその土地の民謡をジャズで表現するという動きが起こっている」という話をしていたが、つまり「ふたつの世界」はそのくるりヴァージョンなのだと言っていいのではないだろうか。
歌詞の内容は、この曲がエンディング・テーマとして使われているアニメ『境界のRINNE』の登場人物二人の恋心をテーマに書かれていて、「君と僕の埋まらない距離」はくるりにとっての十八番。また、どこかパラレルワールド的な世界観は、『THE PIER』および「There is(always light)」の延長線上にあるようにも思う。それは同時に、今も世界の各地で起きている紛争や、インターネット上の論争など、大小さまざまな「ふたつの世界」の間の無理解に対し、世界の共通言語としてのジャズをもって、相互理解を何とかして促そうとしているかのようでもある。そんな音楽の力への絶対的な信頼に対して、僕はまたしても胸を掴まれてしまった。
なお、オリジナルの「TV ver.」の他に、よりプリミティヴな「Bebop ver.」、より優雅な「Chamber ver.」、さらにはそれぞれのインスト・ヴァージョンも収録されているので、ぜひ聴き比べてみてください。それでは、音博でお会いしましょう。(text by 金子厚武)
過去作もハイレゾで
くるり / There is (always light) / Liberty & Gravity Special
映画『まほろ狂騒曲』主題歌「「There is(always light)」と、前アルバム『THE PIER』のリード・トラック「Liberty&Gravity」にフォーカスしたスペシャル・エディション。元スーパーカーの中村弘二監修による別ミックスや気鋭のクリエイター「Madegg」によるリミックス、さらには岸田自身による弾き語りデモ・ヴァージョンなど収録されたレアトラック集。
2007年より7年間続いた、くるりとチオビタ・ドリンクCMタイアップ曲集。アルバム『ワルツを踊れ』『魂のゆくえ』『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』『坩堝の電圧』そして、最新アルバム『THE PIER』からの代表曲で綴られたベスト選曲! くるり入門としても最適な1枚。
>>『There is (always light) / Liberty & Gravity 』&『くるりとチオビタ』レヴュー
発売前からライヴにて披露され、驚きと興奮を呼んだ「Liberty&Gravity」をはじめ、2014年10月公開の映画『まほろ駅前狂騒曲』主題歌、NHK総合『ファミリー・ヒストリー』主題歌他を収録したフル・アルバム。時代と世界を自在に行き交う、音と言葉の冒険の旅。過去の記憶の集積と想像力が掛け合わされて誕生した作品。
LIVE INFORMATION
京都音楽博覧会 2015 IN 梅小路公園
2015年9月20日(日)@京都・梅小路公園 芝生広場
出演 : くるり / 高野寛 / indigo la End / コスモ・シェルドレイク / 八代亜紀 / アントニオ・ロウレイロ / ましまろ / 木村カエラ
くるり 20th ANNIVERSARY「NOW AND THEN vol.2」
2015年11月2日(月)@鹿児島CAPARVO HALL
2015年11月3日(火祝)@Zepp Fukuoka
2015年11月5日(木)@BLUE LIVE HIROSHIMA
2015年11月6日(金)@愛媛Wstudio RED
2015年11月7日(土)@高松オリーブホール
2015年11月10日(火)@Zepp Nagoya
2015年11月13日(金)@新潟LOTS
2015年11月14日(土)@金沢EIGHT HALL
2015年11月16日(月)@Zepp DiverCity TOKYO
2015年11月18日(水)@新木場STUDIO COAST
2015年11月22日(日)@Zepp Sapporo
2015年11月24日(火)@宮城Rensa
2015年11月28日(土)@Zepp Namba
PROFILE
くるり
1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロック・バンド。