2013/11/28 00:00

「燻った生活を燃やしたい」。ヴォーカル、岡田ピローのその気持ちを原点に結成されたバンド、夕暮レトロニカ。バンド名さながら、懐かしくもあたたかく、人の心をぐっとつかむメロディ・センス、だけど不器用なその人間性に、シモリョー(the chef cooks me)、いちろー(東京カランコロン)をはじめとした多くのバンドマンに愛されている。(前作『夜が明ける』に寄せられたバンドマンたちの愛あるコメントはぜひ読んでいただきたい!)そんな彼らが今回、OTOTOY独占で3曲の新作をリリース!

見かけに似合わなくてもロマンを夢見る「アフターファイブ」、何年生きても実は大して何も持っていない自分たちをピーマンに例えた「空っぽのピーマン」、同棲生活の終わりを歌ったバラード「タイムラグ」と、いつものタフなバンド・サウンドはそのままに、冬の気温を感じさせるセンチメンタルな3曲。この中からさらに、リード曲「アフターファイブ」はフリー・ダウンロードでお届けします!!


夕暮レトロニカ / アフターファイブ
【配信価格】
WAV 単曲 240円 / まとめ購入 480円
mp3 単曲 120円 / まとめ購入 240円

【Track List】
01. アフターファイブ(※mp3のみ無料)
02. 空っぽのピーマン
03. タイムラグ

INTERVIEW : 夕暮レトロニカ

左から、満井直(Ba)、岡田ピロー(Vo, Gu)、徳山大輔(Dr)

そのバンド名をはじめて聞いたときには、「なんてすてきなバンド名なんだ!?」 と思った。その後メンバーのアー写を見たときには「なんてムサい男たちなんだ!?」と思った(失礼!)。そしてその音楽を聴いたときには、ちょっとだけ涙が出た。人間味に満ちた日常を、美しいメロディと激しくも温かいサウンドに乗せて歌う“夕暮レトロニカ"。心の奥底に鎮座する言いようのないモヤモヤをポップスに昇華しながらも、どこか照れ臭さを感じさせる彼らの音楽は、さりげなく、ふとした瞬間に心の琴線に触れて流れていく。バンド結成の経緯から、今回リリースする新曲のことまで、メンバーの3人に話を聞いた。

インタビュー&文 : 岡本貴之

“引っ込み思案の祭り好き"なんですよね

――OTOTOYから新曲3曲が独占配信されますが、これはどんな経緯があるんでしょうか?

岡田ピロー(以下・ピロー) : ミニ・アルバム『夜が明ける』のツアー・ファイナルで、「年内にもう1個くらい新譜出すよ」ってステージの上からお客さんに約束したんですよ。

――ステージ上から宣言した理由はなんだったんですか?

ピロー : ファースト・アルバム『すめば都』を出してから、2年半か3年くらいCDも出してないし曲作りも止まってたんですよ。そこから重い腰上げて作品を出したのが『夜が明ける』だったんですけど、この勢いでみんなにもっと曲を聴いてもらいたいなあと思って、今年中にもう1つ出そうと。

岡田ピロー(Vo, Gu)

――夕暮レトロニカのHPを拝見すると、プロフィールに“「燻った生活を燃やしたい」そう思いたった岡田ピローが徳山大輔、満井直を誘い2007年春に結成"とあるんですが、どんな燻り方をしていたんでしょうか?

ピロー : まあ、中高生時代もさえなかったですし、音楽をやりたくて専門学校に通うために東京に出てきたものの、もともとそんなに遊ぶタイプでもないし悶々としてまして。こんなことを言うのもなんですけど、ナンパとかもしたこともなくて。

――それはまあ、発表しなくてもいいことかもしれないですけど(笑)。ピローさんが最初にバンドをやろうとしたのは、そういう生活を変えたいと思ったからなんですか?

ピロー : そうですね。やっぱり、ギターを弾いて大きな声で歌うというのは、すごく自由に見えたので。俺もこれをやりたいなあ、と。11歳ぐらいにギターをはじめたんです。

――「アフターファイブ」の出だしで、〈小さな頃から引っ込み思案〉と歌ってますけど、人前で歌うのには勇気が必要だったんじゃないですか?

ピロー : う~ん、でも“引っ込み思案の祭り好き"なんですよね(笑)。クラスにいるじゃないですか、文化祭の準備になるとちょっとウキウキしだす教室の隅っこにいる奴。中学でも、「3年生を送る会」とかで急に前に出てきて、まあ微妙な空気になってましたね(笑)。「あ、なんであいつが!?」って。

――普段は大人しいのに(笑)。

ピロー : そうなんですよ(笑)。

岡田ピローは人を魅了するものを持っていた

――夕暮レトロニカはどのように結成されたんですか?

ピロー : 全員が通っていた音楽専門学校で知り合いました。最初は、(徳山)大輔と、仲のいい奴にベースを持たせてたのがバンドの走りなんですけど。学祭ライヴに出たりとか、大輔の地元の沖縄のイベントに出たりとか。その後ベースが抜けて、満井にギターからベースに持ち替えてバンドやらないかって持ち掛けて。

満井直(以下・満井) : そうなんですよ。元々ギターで学校に入ったんですけど、ベースにコンバートしました。

――それは、ピローさんの作る曲に魅力を感じたのが大きかったんですか?

満井 : そうですね、あとバンド活動をちゃんとやったらおもしろいんじゃないかっていう気持ちがあって。それに対して楽器はなんでも良かったんですよね。最初は、バリトン・ギターっていう、ギターのチューニングの1オクターブ下の楽器を使ってて、それでライヴをやってたんです。『すめば都』はバリトン・ギターで録ってるんですけど、それ以降は全部4弦ベースを弾いてます。

――徳山さんはあくまでもプレイヤーとして腕を磨こうと思って学校に入ったんですか?

徳山大輔(以下・徳山) : そうですね、とにかくうまくなりたいという願望だけで、バンドを組む気持ちはなかったです。ジャズのアンサンブルの授業に積極的に出て、先生が外でやっているジャズのセッションに一緒に参加したりとか。東京に来てからはずっとジャズ畑にいたと思います。

徳山大輔(Dr)

――ジャズから、歌物のバンドに入ったのはなぜですか?

徳山 : なんだかなんだで、歌物が好きだったし、彼(岡田ピロー)は人を魅了するものを持っていたし、僕も一緒におもしろいものが作れたらいいなと思って参加しました。

――バンドでは最初にどんな音楽をやろうと思ったんですか?

徳山 : 共通して好きなのは、クラムボンだったんで、最初は寄せようと思ったかもしれないです。

満井 : でも結成当時は全然わかってなかったなって。方向性も特に話さなかったし。だんだんやっていくうちに、「方向性が無いとだめなんじゃない?」っていう話合いを徐々にしていっていまに至る、みたいなところはありますね。

――“夕暮レトロニカ"というバンド名からは、「三丁目の夕日」のようなノスタルジックなイメージが浮かびます。

ピロー : これは、「夕暮レノスタルジー」っていう曲を作って、まさにそのとき、そんな気分だったんですど。で、バンド名をどうしよう? っていうときに最初「パンナコッタ」にしようっていう案が出たんですけど、いやそれじゃないのがいいって(笑)。

徳山 : 夕暮レトロニカにしたのは、ひとりずつ気に入ったキーワードを出して、それを組み合わせたんです。

ピロー : 僕は夕暮れな気分だったんで、“夕暮"を出して。

徳山 : 僕はそのころエレクトロニカに没頭してたんです。そのときの気分をここまで引きずってしまった感じなんですけど(笑)。それと、最初にいたベーシストが“レトロ"を出したんです。初期はそれに見合った音像をやってましたね。

――エレクトロニカの要素を入れて?

徳山 : 要素というか、最初はサンプラーを導入してて。割と電子楽器を入れてたんです。あと僕もスネアにテープエコーかまして、ダビーなことをやってたりとか。いまじゃセッティングが大変でやれないですけど(笑)。

――徳山さんはジャジーな世界から、かなり幅が広がりましたね。

徳山 : だんだん、フリー・ジャズの世界を知っちゃって。最初にいたベーシストも菊池成孔さんのDCPRGとか、前衛的なジャズやエレクトロニカが好きで、音楽的にはそういうところで繋がっていて。2人で、ドラム2台に、ラップトップ1台、チューバがあったりとか、バイオリン、シタールがいるバンドに加わってセッションをやったりして。「あ、東京に来たっぽいコレ!」って思って(笑)。沖縄にはこういう音楽シーンはないなと。だから僕がバンド名を決めるときにエレクトロニカって言ったのは、都会への憧れもあるんですよね。

今回の曲はリアルタイムで書いてるんで、実体験から書いてますね

――では今回配信される3曲について訊かせてください。「空っぽのピーマン」の〈例えるならば僕らはピーマン〉というのは、どういうことでしょうか?

ピロー : 小さいころにピーマンを食べたころの、「中身入ってね~!」っていう気持ちを(笑)。

満井 : でも、割とうまいこと言ってるなって思います。からっぽだけど、言いたいことの種みたいなものはしっかり入ってるしっていう。

満井直(Ba)

――「タイムラグ」という曲は、ハッキリと一緒に住んでいた人との別れが描かれていますね。

ピロー : その通りです、はい。今回の曲はリアルタイムで書いてるんで、実体験から書いてますね、ええ。僕的には「僕らのギャラクシー」っていう曲の続編なんですけど。まあ聴く人にはそのときのその人の生活があるでしょうし、最終的に曲がその人のものになっていくれたらな、と思います。

――最後のフレーズ〈君といる時は3時の方向いて これからは6時の方向いて〉というのはどんな意味なんでしょうか?

ピロー : これは僕が彼女と一緒に住んでたときにですね、彼女が寝るのがだいたい0時くらいで、僕はバンドが忙しかったんで夜中に帰って全然かまってなかったんですよ。で、彼女が起きるのが6時くらいで僕はその後に目覚めてたんですけど。別れたとたんに6時に起きれるようになって。僕は3時ごろに寝ていて彼女は反対の方向を向いてたけど、全く反対の9時の方向でも無くて、まだ6時くらいかな、という。大まかな捉え方としては、あまり時間が進んでない、ということです(笑)。

――深いですね。こういう曲を歌う時の気持ちってどうなんですか?

ピロー : こうしたネガティヴなものを思いっきり生々しく書くっていうことは、以前は書いてて気持ち悪くてやらなくて。今回もまあ、気持ち悪いなかで書いてるんですけど、これはやっぱり出来ちゃうから作ろう、と。

――表現者としてそこを抑える必要はない、と。

ピロー : そうですね。

――「アフターファイブ」の歌詞にある“二番目に好きなカバンを買う"心境というのは?

ピロー : う~ん、“気にしい"、なんですよね。できることなら日常では角を立てずに冗談ですませたいと思うんですけど、同時にそれはダセエな、とも思っていて。学生時代にウザいと思っていた、いわゆる"遊んでる奴"も、いま思えば正しかったなと思うんですよね。そのころは道徳的に外れた人のことを責めるように見てたんですけど、それは道徳とかを外れてでもやりたいことだったんだろうなと思うと、普段俺が守ろうとしている道徳は、なんの価値があるのかな? というか。確信の無い道徳だなって。… まあ考え中のことなんでうまくまとまらないですけど。

――ピローさんの“気にしい"な部分が曲に反映されてるんですね。例えば“一番好きなカバン"を持つと目立ってしまうから嫌なんですか?

ピロー : そうです(笑)。

――でも、ピローさんにとっては1番好きなカバンも、他人から見ればそうじゃないかもしれないじゃないですか?

ピロー : だからそういうのもひっくるめて考えて、2番目のカバンにするわけですよ(笑)。

――なるほど(笑)。無難な方にする?

ピロー : そうですね。でも、カバンはもちろん小さな例えとして歌ってるんですけど、もっと大きな人生の決断でも、同じようにしていて。でもこれまで1番大きな決断というのは、就職しないで音楽をやるということだったんですけど、2番を選びがちな俺が1番前に出るバンドのボーカルというのをしているということに意味があると思うし、そこを同じような2番を選ぶやつに知ってもらいたいというか。それが音楽をやりたい理由になってると思いますね。

――おふたりがピローさんと一緒にバンドをやっている理由もそこに共感しているからですか?

徳山 : 俺、1番良いカバン選ぶ方ですね(笑)。

ピロー : そう、それは知ってる(笑)。バラバラな3人なんですよ。ただ俺の燻りとは違う部分で燻ってるんで(笑)。考え方が一緒でありたいとは思わないし、違っても良いという考えだからこそ、俺はこのバンドに自信があるんですよ。

みんなの性格を把握しようと思って動画を見たらファンになっちゃいまして(笑)

――今回の新曲リリース以降、年内の活動について教えて下さい。

ピロー : 年内はライヴが何本かあります。あとは、“乗り込み! 乗っ取り! アイドル" ベイビーレイズに曲を提供したんですけど。

――あ、そうなんですか!? 「あまちゃん」の「暦の上ではディセンバー」を歌っている?

ピロー : はい、そうです。それで曲を作るときにみんなの性格を把握しようと思って動画を見たらファンになっちゃいまして(笑)。

満井 : 乗っ取られたんだ(笑)。

一同 : ははははは!

ピロー : 俺は虎ガー(※岡田ピローより解説 : ベイビーレイズファンの呼称・「虎ノ門ガーディアン」略して「虎ガー」)なんで。

――虎ガーになりつつも、曲を書いて(笑)。

ピロー : はい、リリースは未定なんですけど。その曲をライヴで初披露するのが、12月22日に新木場コーストでやるベイビーレイズ主催のフェス(「ベイビーレイズ伝説の雷舞! -猛虎襲来-」)で、他の曲を提供している方々、ニューロティカ、秀吉、SNAIL RAMP、鶴なんかが出るんですけど、そこに俺達も出て提供した曲を一緒に演奏して、俺達の曲のライヴもやるんですよ。

――それは虎ガーとしては…。

ピロー : ええ! 楽しみですね。

徳山 : ええ! じゃねえよ(笑)。

満井 : ははははは!

――おふたりは別にファンになってはいない?

満井 : う~ん、俺は別に。

徳山 : あのう、僕は好きになっちゃうと思うんですよね。

一同 : (笑)。

徳山 : だから、一緒にやるまでは見ないようにしてます。(照れながら)好きになっちゃって、スティック落としちゃうんで。

――もうすでにデレデレしてるじゃないですか(笑)。

徳山 : はい、デレデレしてます(笑)。

ピロー : (笑)。だから本番は、虎ガーとしてではなく、夕暮レトロニカとしてやりたいと思います。

徳山 : そうですね、ケジメつけるように頑張ります。

――来年はアルバムを出す予定もありますか?

ピロー : そうですね、曲を作って行ってアルバムを出したいと思います。ポップスって本当に良いものだなって思っていて。夕暮レトロニカは歌いたいことを歌ってるバンドですし、これからも良い曲を歌っていくので、ぜひ聴いて下さい。

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LIVE INFORMATION

KYARA 14th Anniversary
2013年11月30日(土)@北浦和KYARA

PROFILE

夕暮レトロニカ

岡田ピロー(Vo, Gu)、満井直(Ba)、徳山 大輔(Dr)

「燻った生活を燃やしたい」そう思いたった岡田ピローが徳山大輔、満井直を誘い2007年春に結成。以後都内を中心にライヴ活動を繰り広げ、めでたい、楽しい、でも切ないライヴが好評を博す。2010年、blue greenよりファースト・フル・アルバム『住めば都』、2013年春にミニ・アルバム『夜が明ける』を発売。

>>夕暮レトロニカ OFFICIAL HP

[インタヴュー] 夕暮レトロニカ

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