
2011年にリリースされたデビューEP『スペース・イズ・オンリー・ノイズ』がピッチフォークのベスト・ニュー・ミュージックを獲得し、大きな話題を呼んだ弱冠23歳の新世代プロデューサー、ニコラス・ジャーとギタリスト、デイヴ・ハリントンによるバンド、ダークサイドがデビュー作『サイキック』をリリース。怪しく構築された官能的なグルーヴが終始漂う、新境地も感じさせる一枚。この衝撃のデビューを、聴き逃すことがないよう。
DARKSIDE / Psychic
【価格】
mp3、WAVともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
【Track List】
1. Golden Arrow / 2. Sitra / 3. Heart / 4. Paper Trails / 5. The Only Shrine I've Seen / 6. Freak, Go Home / 7. Greek Light / 8. Metatron
研ぎ澄まされた冷たさ

ニューヨーク生まれ、チリ育ちのエレクトロ音楽プロデューサー、ニコラス・ジャーとミュージシャンのデイヴ・ハリントンによるツイン・プロジェクト、ダークサイド。今年4月にはSonar Sound 2013で初来日し、耳の早いリスナーから注目が集まりつつあるなか、ついにデビュー作となるアルバムが発表された。既にニコラスは個人名義での活動で名の知れた存在であるが、グループとしてはどのようなアプローチを繰り広げているのか、解剖していきたい。
作品全体としては、終始ダウナーな音で埋め尽くされた印象を受ける。ヴォーカルやギター・フレーズ自体には感情的な要素が見え隠れするものの、根底を支えるエレクトロ・サウンドはスローモーで、引きずるように進行を続けていく。重く鳴り響く低音と相まって、その足取りはいかんともしがたいけだるさをあぶり出す。ブツブツとした薄いノイズの膜がつねに張られていることも、浮き立ちかけた音を再び沈み込ませる要因となっている。焦燥感や疾走感はほとんど見られず、内へ内へともぐりこんでいく音像はさながら禅問答を繰り返しているような感覚へと浸らせてくれる。
演奏面できわめて特徴的なのが、電子音と生音を共に利用しつつ、互いを明確に分離させている点である。極端に切り離しているわけではないのだが、楽曲内の進行状況によってどちらかをメインに据えていくように調節されており、リスナーは各楽器音の特性を明瞭に判断できる。これはアーティストがどのような組み合わせでどの音が際立つのか、余すことなく把握ができていなければ成しえない技術だ。エレクトロ面を押し出しつつも、生音でしか表現できないデリケートな音量強弱表現、じんわりと変化する伸縮も余すことなく触れていく。こういったバランスによって、内省的でありながら息づいた感触が呼び起こされていくのである。
ダークサイドの織りなす精神世界は、粘度と湿度で覆われた仄暗さがたちこめる。しかし、あえてそのなかに溶け込んでいくことで見えるヴィジョンには、研ぎ澄まされた冷たさが存在している。緊縮した神経を奮い立たせ、その冷たさを悟るとき、ミニマムな視界は一気に広がりを見せ始めていく。(text by 高橋拓也)
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PROFILE
DARKSIDE
ニューヨーク生まれチリ育ち弱冠23歳の新世代プロデューサー、ニコラス・ジャーとギタリスト、デイヴ・ハリントンによるバンド。ニコラスのデビュー作『スペース・イズ・オンリー・ノイズ』(2011年作品)はダンス系音楽サイト、レジデント・アドバイザーの11年年間ベストアルバム1位を獲得、ピッチフォークでも8.4点、ベスト・ニュー・ミュージックを獲得する等、世界中を席巻した。