
2013/9/4~9/10の注目の2作品をレビュー!!
今週もたくさんの新譜が入荷しました! 全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューとともにご紹介いたします。 音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をおたのしみください。あなたとすてきな音楽の出会いがありますよう。
VOLCANO CHOIR『REPAVE』
VOLCANO CHOIR / REPAVE
【配信形式】
mp3、WAV
【価格】
mp3、WAVともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
昨年グラミー賞において、最優秀新人賞を受賞したフォーク・ロック・バンド、ボン・イヴェール。そのバンマスを務めるジャスティン・バーノンが友人を集めて結成した、もうひとつのバンドがヴォルケーノ・クワイアーである。もともと活動ペースが流動的で、2008年の1stアルバム発売と来日ライヴ以降、ほとんど動きの見えなかった彼らだったが、本年度に突如2ndアルバムの発売を発表。秘密裏にレコーディングを進めていたことが明らかになった。 ボン・イェールで見られる、アコースティック・ギターの柔らかなアルペジオ、繊細な母性的コーラスはそのままに、よりドラムの力強さ、リズムのミニマル性を強めた構成をプッシュ。バンドによって築かれたグルーヴを明確化し、これがアルバム全体の流れを整えている。また電子楽器による空間音の装飾も随所に盛り込まれ、張りつめた空気が緊張感・疾走感を促していく。そしてほんの少しのざらついた感触が、閑散とした寂しさを思い起こさせてくれる。秋への移り変わりが感じられつつある今、本作はその情緒への寄り添いを求めているかのようである。(text by 高橋拓也)
Flare a.k.a. Ken Ishii『DOTS』
Flare a.k.a. Ken Ishii / DOTS
【配信形式】
mp3、WAV
【価格】
mp3、WAVともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,800円
17年ぶりのケンイシイのあっと驚くフレア節。世界デビュー20周年の企画のひとつとして リリースされたケンイシイ、フレア名義の新作。フレアと は主に日本のテクノ・レーベ ル、サブライムからリリースしていた名義で、1990年代初頭、具体的にはケンイシイ名義 のR&Sからの 「Extra」~『Jelly Tones』以前のスタイル――DJフレンドリーというより も、彼の実験的なサイドがより濃く繁栄されいている名義と言えるだろう。本作もそうし たサイド を踏襲した作品で、そのサウンドは現在のケンイシイ名義で繰り広げているエ ネルギッシュでファンキーな路線とはひと味ちがった現在の彼の音を示し ている。抑制 の効いたテンションを終止キープしつつ、彼のなかで起る、純粋なる電子音の実験の喜悦 がひしひしと伝わってくるかのようにアルバムは 展開していく。まさにフレア名義なサ イケデリックな電子ダブ“Deicer”やエクスペリメンタルなアンビエント“Northbound Part 2”といったノンビート、彼のルーツである初期デトロイト・テクノを彷彿とさせる“Manic State Survivor”、もうひとつのルーツ、クラスターやコニー・プランクのユーモラスで 乾いた電子音の実験を地でいくエレクトロ“Kigoh”、最近の彼 の作品をフレア名義の フォーマットへと落とし込んだようなポップでカラフルな“Snowed Under”など、まさに多 彩だ。古いファンには納得の(なんとなく『Innerelements』あたりを思い出した)、そ して最近のケンイシイのファ ンには新鮮な作品となるだろう。ワンオートリックス・ポ イント・ネヴァー(WAPRからの新作がすばらしい)あたりが牽引する新たな電子音の冒険 や、ここ最近のμ-ZIQの動きにも共鳴しそうなサウンドでもある。エレクトロニカでもア ンビエントでもない、そしてミニマルでもないテクノの冒 険が復権しているような気が じんわりと。いや、もうしてるか。(text by 河村祐介)