現代のソウル・ミュージック・シーンを繋ぐ21世紀型レーベルーー高橋健太郎が読み解くSWEET SOUL RECORDS

良質なソウル・ミュージックを扱う21世紀型のレーベル、SWEET SOUL RECORDSが今年で創立5周年を迎える。世界基準の視点と確かなスキルで、本物志向の日本人の発掘や、海外の素晴らしい音楽を紹介し続けている同レーベルを、このたびOTOTOYで大特集!! 高橋健太郎の評論とともにSWEET SOUL RECORDSの魅力に迫ります。また、Nao Yoshiokaら日本人実力派シンガーがソウルの名曲をカバーした人気コンピレーション・シリーズのベスト『TOKYO SOUL COLLECTIVE』、Quentin Moore、Avery*Sunshineの新作も配信スタート!! このタイミングをきっかけに本物のソウルを体感してみてください!!
才能溢れるディーヴァが放つ、彩り豊かな楽曲に満ちた現代Soul / Gospelの最注目盤!
Avery*Sunshine / The SunRoom
【配信価格】
WAV、FLAC、ALAC 単曲 249円 / まとめ価格 1,800円
mp3 単曲 200円 / まとめ価格 1,500円
シンガー / ソングライター / ピアニストと多彩な顔を持ちながら、その全てが高いレベルを誇るAvery*Sunshine(エイヴリー・サンシャイン)。今作『The SunRoom』はそんな彼女がデビューから4年の歳月を経て完成させた待望の一枚。これまで彼女が築いてきたキャリアがぎゅっと凝縮された仕上がりになっている。”名盤”と呼ぶにふさわしい作品。
音楽の神に愛された21世紀のCurtis Mayfieldが放つTess Henleyも参加した傑作!
Quentin Moore / You Forgot Your Heart
【配信価格】
WAV、FLAC、ALAC 単曲 249円 / まとめ価格 1,800円
mp3 単曲 200円 / まとめ価格 1,500円
電子音のサンプリングに満ちあふれた現代のソウル・シーンにおいて、徹底的なまで生音にこだわるリアル・アーティストQuentin Moore(クエンティン・ムーア)。シンガー、ギターやピアノ、ドラム、ベースに至るまで弾きこなすインストゥルメンタリスト、ソングライター、プロデューサーと数多の顔を併せ持つ彼による2ndアルバム。
SWEET SOUL RECORDSによるコンピレーション・シリーズのベスト作
TOKYO SOUL COLLECTIVE 2009 - 2014
【配信価格】
WAV、FLAC、ALAC 単曲 249円 / まとめ価格 1,800円
mp3 単曲 200円 / まとめ価格 1,500円
SWEET SOUL RECORDSがこれまでリリースしてきた日本人によるソウルの名曲カバー・シリーズを中心に、TOKYOから世界へ向けて発信するベスト・コンピレーション盤! SWEET SOUL RECORDSの歴史を辿ると共に、過去に生まれたソウルの名曲達を日本の実力派シンガー達が鮮やかに蘇らせ、タイムレスな魅力を伝える1枚に仕上がっている。参加シンガーはNao Yoshiokaをはじめ、シンガー・ソングライターとして圧倒的才能と実力を誇るKaori Sawada、MISIAのバックコーラスとしても活躍するLyn、YUKIなどのバックコーラス経験も持つAzumi Takahashi、実力派男性シンガーYuho Yoshiokaなど総勢12名。今年で創立5周年を迎えるSWEET SOUL RECORDSの歴史とソウルの歴史が詰まった要チェック盤。
現在進行形のソウル・ミュージックを息づかせた21世紀型のレーベル(by 高橋健太郎)
ソウル・ミュージックというのは、基本的には、アメリカで生まれた、アメリカの音楽である。その黄金時代は1960年代後半から1970年代だったと言ってしまってもいいかもしれない。ソウル・クラシックと呼ばれる名盤の多くは、その時代にアメリカのブラック・ミュージシャンが生み出したものだ。
当時のソウル・ミュージックは、当然ながら、完全な生演奏によるものだった。1980年代以後になると、ヒップホップやハウスやテクノが登場し、サンプラーやエレクトロニクスを使った音楽手法が、ソウルの世界でもサウンドを塗り替えていく。そして、面白いことに、それ以前の生演奏中心のソウル・ミュージックが蒔いた種は、アメリカ以外の国で根強いシーンを形成していくことになった。ネオ・ソウルとか、オーガニック・ソウルとか、レトロ・ソウルとかいう言葉で形容されるようになったそれは、いつのまにか、アメリカよりもむしろヨーロッパ、イギリスやオランダ、スウェーデンやデンマークといった国が重要拠点となっていたりする。
SWEET SOUL RECORDSは2009年に始まった比較的新しい日本のインディペンデント・レーベルだ。日本にもマニアックなソウル・ミュージックのファンは多かったし、名盤のリイシューを世界に先駆けて行うレーベルも幾つかあった。が、SWEET SOUL RECORDSはそうしたレーベルとは少し傾向が違っている。世界各地で同時多発的に生まれている現在進行形のソウル・ミュージックを息づかせた21世紀型のレーベル。そういうフレッシュさを持ったレーベルなのだ。
実のところ、僕がこのレーベルの存在を知ったのは比較的、最近のことである。最初に偶然、知って、惹かれたのは、オランダのRaynというアーティストだった。ベニー・シングズの大ファンである僕は、アムステルダムのシーンにはそれなりの関心を払ってきたはずだったのだが、このアーティストのことはまったく知らなかった。それをきっかけにチェックしてみると、SWEET SOUL RECORDSのラインナップは、知らないアーティストばかりなのに、そのクォリティーとセンスに一貫したものが感じられた。コンピレーションにはアメリカやヨーロッパばかりか、メキシコやニュージーランドのアーティストまで含まれていたりする。世界各地のインディペンデントなソウル・アーティストに対して、独自のアンテナを張り巡らし、ネットワークを築いているレーベルがある。そういう驚きが、レーベルのカタログにはあった。
オトトイで配信が始まる最近のSWEET SOUL RECORDSのリリースも、とても充実している。一つはAvery*Sunshineのアルバム『The SunRoom』。Avery*Sunshineはフィラデルフィア出身で、現在はアトランタを拠点に活動するシンガー / キーボード・プレイヤーだ。2005年にデビュー・アルバム『Avery*Sunshine』を発表。このアルバムには、僕の友人でもあるアトランタ在住のピアニスト、宮本貴奈が参加していた。
今回、リリースされる『The Sunroom』は、それから9年ぶりにもなるセカンド・アルバムだ。エレクトリック・ピアノを弾きながら歌う彼女のスタイルは、1970年代のパトリース・ラッシェンを連想させたりもするが、歌声はパトリースよりビターでアーシー。冒頭の「Won’t You Try」や11曲目の「See You When I Get There」などには、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのファンク・フィーリングが埋め込まれていて、スウィートでいながらタフな魅力も持つ曲に仕上がっている。4曲目の「One Foot Ahead」や6曲目の「Time To Shine」あたりに顕著な、60年代のモータウンなどに遡るレトロな曲調をひとひねりした斬新なリズムで聞かせる力技は、ファレル・ウィリアムスのヒット曲「Happy」にも通じたりする。聞き込むほどに、スムースなだけのネオ・ソウルには終わらない、懐深い表現力を感じさせるアルバムだと思う。
もう一枚の注目リリースは、テキサス州オースティン出身のシンガー / ギタリストのQuentin Mooreのアルバム『You Forgot Your Heart』。これも彼にとってはセカンド・アルバムに当たる。ギターばかりでなく、キーボード、ベース、ドラムスもプレイして、60~70年代的なソウル・ミュージックを紡ぎ出す、という点ではラファエル・サディークなどにも通ずるが、違いがあるとしたら、サディークにはヒップホップ以後ならではの再解釈や洒落のめした感覚があるのに対して、Quentin Mooreはより素直で、愛に溢れている点だろうか。
Quentin Mooreは生演奏に徹底したこだわりを持っているようで、その分、サウンドの細部には隙もある。リズムのよれなども、そのまま残されていたりするのだが、それを含めて、あえて時代に抗うミュージシャンとしての気概がよく伝わってくるアルバムだ。コンピュータを援用すれば、どこまでも完璧をめざすことができる昨今だが、そこで失うものをQuentin Mooreは強く意識しているのかもしれない。
ファルセット・ヴォーカルはカーティス・メイフィールドを思わせるが、地声で歌う時には、ブルージーなディストーション・ギターとあいまって、ボズ・スキャッグスのような白人のロック・アーティストを連想させたりもする。いずれにしろ、ギターを弾きながら歌うというスタイルが基本で、その点でも、現代には意外にいそうでいないタイプ。どこかでは、テキサス・ブルーズの伝統とも接続しているのかもしれない。
SWEET SOUL RECORDSはこうした海外のインディペンデントなソウル・アーティストの作品を積極的にリリースする一方で、日本人アーティストの音源も製作している。世界各地に広がった現代のソウル・ミュージック・シーンと繋がりつつ、日本からのそれも発信するというのは、考えてみれば、当然の流れだろう。代表的なアーティストは澤田かおり(現在はレーベルを移籍)、そして、昨年11月にデビュー・アルバムをリリースしたNao Yoshioka。海外との情報交換でプロダクションの方法などをステップアップさせていき、例えば、オランダや北欧諸国に育っているようなシーンを日本にも生み出したい、という野心がレーベル活動の根幹にあるのだろう。
オトトイから配信される『TOKYO SOUL COLLECTIVE 2009-2014』は、そんなレーベルの歩みを記録したコンピレーションだ。収録されているのは、前述の澤田かおり、Nao Yoshiokaをはじめとする12名のソウル・ヴォーカリスト達。ソウルの名曲のカヴァーを中心とした15曲が収められている。生音重視のプロダクションで、ミュージシャンやエンジニアを含めたチームワークをレーベルが有しているのが分かる。1960~70年代のソウル・ミュージックは、ハウス・スタジオ、ハウス・ミュージシャンで製作されているものが多かった。そこに回帰する流れというのも世界的にあることを感じさせる。
ヴォーカリスト達の多くはオーディションで選ばれたということだが、SWEET SOUL RECORDSというレーベルは、ある種の学校のような場所にもなっているのかもしれない。オーナーは30代前半、スタッフの多くは20代だという。ソウル・ミュージックをキーワードにしつつも、21世紀になってから生まれた若いレーベルなのだ。レーベルのスマートフォン・アプリを作っているあたりも、これまでにないフットワークを感じさせる。オトトイでの配信が始まるのをきっかけに、さらに新しい展開も生まれるのではないか。そんな期待も抱きつつ、僕は今回リリースの三作品を聞いているところだ。(text by 高橋健太郎)
PROFILE
SWEET SOUL RECORDS

魂だとかSOULだとかって良く耳にするけど、どれだけのSOULが本物なのか。商業的な成功だけを目的とした作品は到底SOULなどと呼べず、むしろそれは魂を売っているのと同義だと思います。
本物のSOULとは、どれだけ本気で人生やこの世界と向き合ってるか、という深い愛に基づいた、人間の根源的な精神性を表わすものだと我々は考えています。つまりそう簡単に表現できるものではないのですが、伝わった時は心の奥底で響き続ける、永遠に近い感動を生み出すことができる、人間の最も秘められた力のように感じています。そのSOULを表現する手段は沢山あるのですが、我々は音楽に心を動かされ、触発され、モチべートされた人間たちです。音楽を通し感動と興奮を知り、人々と出会い、多くのことを学んだ経験から、 SOULというのは愛のある温かさだという思いを強くしています。
SWEET SOUL RECORDS(スウィートソウルレコード)は音楽の持つ本来の魅力を、世界基準の視点と確かなスキルで世の中に訴えかけていく本物志向の日本人の発掘や、海外の素晴らしい音楽を紹介し、グッド ミュージックを世に広めることがミッションです。
Avery*Sunshine

シンガー / ソングライター / ピアニストと多彩な顔を持ちながら、その全てが高いレベルを誇るAvery*Sunshine(エイヴリー・サンシャイン)。彼女のキャリアは、あのTyler Perryのステージでリード・キーボーディストとして雇われたことからスタート。そこでミュージカル「Dreamgirls」の合唱ディレクターを務めていたJennifer Holidayに見出されると、2年後には同作品で自身がディレクターを務めるようになるなどキーボーディスト・ディレクターとして活躍。更にはアメリカの民主党大会や、2009年のオバマ大統領就任における4つのプライベート・イベントでパフォーマンスを披露し、Will DowningやMusiq Soulchildらとコラボレート、LedisiやRachelle Ferrellの前座も務めるなどシンガーとしても頭角を表すようになった。
そして2010年にデビュー・アルバム『Avery*Sunshine』でRoy Ayersを2曲ゲストに迎えたことやその完成度の高さから一人のアーティストとして話題を呼ぶと、ニューヨークのBlue Note、ロンドンのJazz Cafeと世界で最も著名なヴェニューにも登場。 Good Day AtlantaやCBS Early Morning-Atlanta、 Live At 9-Memphisなどのテレビ出演も果たした。更に2011年にはB.B. Kingとも共演を果たすなど輝かしいキャリアを歩んでいる。
今作『The SunRoom』はそんな彼女がデビューから4年の歳月を経て完成させた待望の一枚。これまで彼女が築いてきたキャリアがぎゅっと凝縮された仕上がりになっている。”名盤”と呼ぶにふさわしい作品だ。
Quentin Moore

電子音のサンプリングに満ちあふれた現代のソウル・シーンにおいて、徹底的なまで生音にこだわるリアル・アーティストQuentin Moore(クエンティン・ムーア)。シンガー、ギターやピアノ、ドラム、ベースに至るまで弾きこなすインストゥルメンタリスト、ソングライター、プロデューサーと数多の顔を併せ持つアーティストだ。上質音楽の宝庫、テキサス州オースティンで生まれ育ち、教会でソウルの耳を養いオルガンに目覚めた彼は、中・高校でドラムラインを経験したことでドラムを身につけた。更には大学でJimmy Smith、Jaco Pastorius、Herbie Hancockらに影響を受けJazzにも傾倒し、ここでエレキギターとベースもレパートリーに加え、自身のバンドSoulbolを結成すると、作詞作曲からプロデュースまで自身でこなす天性の才能を見せた。この常に新しいスタイルを求める真摯な姿勢とそれを可能にする超人的な才能からCurtis MayfieldやMarvin Gayeなどにも例えられるQuentin。その才能を世界に向けて押し出した『Vintage Love』が日本でも話題を呼ぶと、Erykah Baduの”Orange Moon”などを手がけたGeno Youngをはじめ、Innercity All StarsやAngela Blairなどと共演を果たした。そしてファースト・シングル『Natural Sista』は UK Breaking Artists Independent Chartsでナンバーワンの座に輝き、UK Soul Chartsで数週間トップテンのランキングを維持。アメリカのアンダーグラウンド・シーンでも人気を博した。本作自体、UK Soul Chartsの第3位の座を占めその勢いはまだまだ増していくに違いない。