ラフ・トレードに見出されたシンデレラ・ボーイたちの躍進は止まらない――Howler、2ndアルバム『World Of Joy』をリリース

ザ・ストロークスやザ・リバティーンズなど、時代を代表するバンドを輩出してきた老舗レーベル、ラフ・トレード。そのレーベル・オーナー、ジェフ・トラヴィスに見初められたことからはじまった、ハウラーの躍進。待ち焦がれた方も多かったことでしょう。デビュー・アルバムから約2年ぶりとなる2ndアルバム『World Of Joy』がリリース! ガレージ、パンクなど様々なジャンルを飲み込みながらもポップな楽曲には更に磨きがかけられ、曲ごとの色彩豊かに。初期衝動の塊のような1stから、カラフルな2ndへ。ティーンエイジャーであったメンバーも20代になり、ハウラーの第2章、スタート!
Howler / World Of Joy
【価格】
mp3、WAVともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
【Track List】
1. Al's Corral
2. Drip
3. Don't Wanna
4. Yacht Boys
5. In the Red
6. World Of Joy
7. Louise
8. Here's The Itch That Creeps Through My Skull
9. Indictment
10. Aphorismic Wasteland Blues
デビュー・アルバム『America Give Up』も併せてチェック!
【価格】
mp3、WAVともに 単曲 150円 / まとめ購入 1,500円
【Track List】
1. Beach Sluts
2. Back To The Grave
3. This One's Different
4. America
5. Too Much Blood
6. Wailing (Making Out)
7. Pythagorean Fearem
8. Told You Once
9. Back of Your Neck
10. Free Drunk
11. Black Lagoon
>>特集ページはこちら
実験を何度も繰り返し、それを楽しんでいるかのよう
2ndアルバム『World Of Joy』、彼らは今作で私をうまく裏切ってきた。1stアルバム『America Give Up』では60年代アメリカン・ロックと80年代パンクに重点を置いていた。その頃の彼らは弱冠19歳にして、2011年8月にNME誌が選ぶ「あなたがこれから愛してしまう新人バンド25」に選出され話題に。そしてアメリカだけでなく日本でも注目されるようになった。しかしそんな彼らの作品をそこまで好きになれなかった。そのため今作に対して私は期待をしていなかったのだ。しかし今作はそんな私の予想をうまく裏切ってきた。
今作はサイケデリック・ロックの要素が増しているように思える。特筆したいのが7曲目の「Louise」。フィードバック・ノイズを用いたギター・サウンドはシューゲイザーに重点を置いているかのよう。しかし終盤にはカントリー・ロックを感じさせるフレーズがあったりと、サイケデリックであるのにキャッチーな仕上がりとなっている。今作でも60年代アメリカン・ロックと80年代パンクを土台にしたスタンスはそのままであるが、その上に80年代ニューウェイヴや90年代シューゲイザーなどの様々なジャンルの要素を感じる。まるで自分たちの好きな音楽をごちゃ混ぜにしたかのような作品だ。
彼らは確実に音楽で遊んでいた。これとこれを足したらどうなるのか、と実験を何度も繰り返し、それを楽しんでいるかのように思えた。私はある人が「ロック・バンドは遊んでないとおもしろいものが生まれない」と言っていたことを思いだした。まさに彼らはそれができているのだ。
今作をリリースすることにより、またこのバンドが話題になっていくことだろう。周囲の期待が高まることで押しつぶされるバンドもいるが、このバンドはそうではない。いつまでも、堂々とし輝きを放った演奏で私たちをわくわくさせていくことだろう。
(text by 北村奈都樹)
RECOMMEND
Royal Bangs / Flux Outside
US南部からやって来た髭面3人組の3作目。フェニックスのレーベル仲間とは思えない(失礼!)男臭い風貌からも想像できる通り、過剰なまでのエナジーに満ちた骨太ロックをかましている。前作でのエレクトロなダンス・ビートが後退したぶん、生演奏(筋肉)の割合が増加。さらにプログレ・チックな壮大さをも身につけて、スケール感も3割増しだ。音が全力でタックルしてくるような、そんなアルバム。
THE DISMEMBERMENT PLAN / Uncanney Valley
祝! 歓喜! 約12年ぶりの新作アルバムで戻ってきたUSインディーのゴッドファーザー、ザ・ディスメンバメント・プラン!!! 自他共に認めるキャリア最高傑作で、別格の存在感が光る嬉し過ぎるリリース! USインディー及びエモ界で最も重要なバンドの一つでここ日本でも絶大な人気を誇る“ディスメン”が数年前の再結成の勢いに乗って、まさかの新作を発表! 圧倒的な知性と芸術性を兼ね備えた文学的ロックの最高峰をとことん感じろ! このバンドがいなかったら、多くの人気バンドは登場しなかっただろうと再認識させてくれる、自信と円熟味が見事に合わさった傑作!
TY SEGALL / Goodbye Bread
前アルバム『MELTED』が話題になったワンマン・ローファイ・パンク野郎のニュー・アルバム! なんとあの名門DRAG CITYからのリリースです! 独特の気怠いサイケ要素とラフなローファイ・パンク・スタイルと言うありふれたサウンドなのですが、何か違うものを感じさせる辺りがこのTY SEGALLだけが別格の評価と人気を集める所以かと! 鼻歌風のメロディが何故か耳に残る、センスに溢れた一枚!
PROFILE
Howler
2010年に結成した米ミネアポリス出身の4人組バンド。
60年代アメリカン・ロックと80年代パンクの影響を受けるサウンドにポテンシャルを感じたラフ・トレードのレーベル・オーナー、ジェフ・トラヴィスが即契約。デビュー前から人気が爆発し世界中から注目を集める。12年に『アメリカ・ギヴ・アップ』でアルバム・デビュー。同年フジロック'12、ザ・ヴァクシーンズのサポート、単独と来日公演を行い話題となった。