彼らの才能は「もうおれら友達だよね〜」と引きずりこむ力
「面白いパーティー」の音楽が進むにつれ私はずっこけた。なんだ、かっこつけるフリだったのかと。エコーをかけすぎたマイクに向かって歌うボーカル。ふわふわしすぎて、一体どういう表情で歌っているのか全く伝わってこない。もはやギターやベースの方がメロディアスだ。「カモン」に至ってはライヴのMCを録音したのではないかと疑うほど淡々としていて、今自分がAメロにいるのかサビにいるのか分からなくなる。「本物のキーホルダー」もかっこいいBGMに乗せて、独り言にも至らないつぶやきにごにょごにょと言っているような曲だ。
現代は表現の自由が狭まり、テレビやネットで冗談を言うと炎上してしまう。彼らはそんな時代にわだかまりを感じているのではないか、という印象を受けた。常識と冗談の狭間で苦しんでいるから、開放的にならない音楽に乗せてシュールなコントをぶつけているのではないか…。しかし、そんな真面目な考えも聴けば聴くほどアホらしくなる。なぜなら彼らは、このアルバムを音楽的に評価してほしくて作ったとは思えないからだ。彼らの目的は、一緒にふざける仲間を作ることなのだ。だからプラスもマイナスも言わない。曲の主人公が悲しいか嬉しいかも言わない。ただ、奏でる音楽に相づちを打ってほしいだけなのだ。
そんな彼らの才能は聴いてしまった人を「もうおれら友達だよね〜」と我が世界に引きずりこむ力だ。もしかしたら、その趣向の強い音楽にびっくりして引っ込んでしまう方もいるかもしれない。だが彼らは、わざわざ伝えなくてもいいような普通の話をしているだけだ。もはやなぜそれを伝えなくてはいけないのか、理解できなくて笑ってしまう。でもそんなくだらない話を一緒にできる人こそ、友達という存在なのだ。一度彼らに身をまかせてみないか。きっとすぐに友達になれるはずだ。(Text by 仲本光里)