2011/11/23 00:00

St. Vincent / Strange Mercy

全米メディアが虜になったブレイク確実の可憐なシンガー・ソングライターの最新作! PitchforkでBEST NEW MUSICを獲得、さらに9.0という高評価を獲得、その他海外メディアで称賛の嵐。2012年最もブレイクするアーティスト間違い無し!

【TRACK LIST】
1. Chloe In The Afternoon / 2. Cruel / 3. Cheerleader / 4. Surgeon / 5. Northern Lights / 6. Strange Mercy / 7. Neutered Fruit / 8. Champagne Year / 9. Dilettante / 10. Hysterical Strength / 11. Year Of The Tiger / 12. This Wave / 13. Year Of The Tiger (Live:4AD Session)

ここ日本でも歌番組やCMにひっぱりだこのレディ・ガガに、先日惜しくも亡くなったエイミー・ワインハウス。00年代、10年代の音楽シーンは「才能と美貌を兼ね備えた女性シンガー」が牽引しているといっても過言ではない。そんな、活気のある女性クリエイター・シーンの中で、今一番の注目株がセイント・ヴィンセントことアニー・クラークだ。

アメリカのダラス出身でありながら、イギリスのインディー・レーベル4ADの期待を一身に背負うアニーは、2007年のデビュー以降、最先端の音楽を発掘、紹介することで定評のあるピッチフォーク誌から大衆紙ガーディアンまで幅広いメディアの賞賛を浴びる一方、母国アメリカではスピン誌やレイダー誌の表紙を飾るなど、国境を越えて活躍している。

ラップトップ・コンピューターを軸にして制作した2007年のデビュー・アルバム『Merry Me」では、フライング・ロータスやエイフェックス・ツインを彷彿させる前衛的なサウンドと、ブラーやオアシスと並べても違和感のないポップ・センスを両立してみせ、2009年のセカンド・アルバム『Actor」でデビュー・アルバムで披露された鋭い音楽センスを、管楽器、弦楽器を駆使したクラシカルな演奏で、斬新ながら歴史の重みを感じさせるポップスに還元してみせた。その頭脳的な音楽性と新しいサウンドを積極的に取り込む姿勢は、新しい音楽に渇望している音楽ファンの注目を集めている。

そんな彼女の2年ぶり、3枚目のアルバムとして作られた本作『Strange Mercy」は、彼女の18番であるギターにスポットを当て、クラシカルな音色と前衛的なサウンド、それにロックらしいワイルドさを融合させた、これまでのロックの枠組みを積極的に打ち破ろうとする彼女の野心が垣間見れる作品だ。

オープニングを飾る「Chloe In The Afternoon」は荒々しいギター・サウンドと、強烈なエフェクトがかけられたビートの上に、地を這うような歌声が覆いかぶさる幻想的なロック・バラード。続く「Cruel」では明るく前向きなロックらしいメロディーをテクノ風の四つ打ちビートの上で表現している。「Cheerleader」「Surgeon」は、どちらもコンピューターの音色を駆使した幻想的なビートが基盤になっているバラードだが、前者はパワフルなギターをアクセントに使ってロック色を前面に打ち出し、後者はシンセサイザーのサウンドを使ったクラシカルなアレンジに仕立てるという、全く違うスタイル。その後も。プログレッシブ・ロックとアンビエント音楽を融合させた「Northern Lights」、クラシック音楽の荘厳な雰囲気と退廃的なメロディが印象的な「Neutered Fruit」「Dilettante」などが続き、アンビエント音楽やダブのような、幻想的な雰囲気に仕立てられたサウンドの上で、弾き語りのようにささやきかけるメロディが光るアコースティック風ナンバー「Year of the Tiger」でアルバムは幕を閉じる。

彼女の音楽性は、ビヨークやフライング・ロータスなど、時代の最先端を突き進んできた人々を連想させる抽象的で前衛的な顔を持つ一方、オアシスやレディオヘッドのようなロック・バンドが築き上げた「ロックらしいメロディ」「ロックらしいアレンジ」をしっかりと踏襲している。先進的だが奇抜ではない、王道だが凡庸ではない、「進化への野心」と「地に足の着いた音楽性」を見事に両立しているのがこのセイント・ヴィンセント。時代の変化に敏感なあなたにこそ、覚えていてほしいアーティストだ。(text by 高野裕介)

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St. Vincent PROFILE

NYブルックリン在住のアニー・クラークことセイント・ヴィンセントはポリフォニック・スプリーやスフィアン・スティーヴンスのツアー・メンバーとして活動を開始。2006年ベガーズ・バンケットと契約を結びソロ・アーティストとしてアーケイド・ファイアの前座をつとめる。4ADからリリースされたセカンド・アルバム『アクター』はピッチフォークでベスト・ニュー・ミュージックに選ばれる等、世界中で高い評価を得た。2011年11月待望のニュー・アルバムをリリース!

[レヴュー] St. Vincent

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