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最初のアナウンスは先月の27日。それからたったの1週間でsominicaが新作を完成させた。とはいえこれはバンド録音ではなく、ヴォーカルの橋本裕弥による弾き語り作品だ。3月11日以降、このサイトから発売されたコンピレーション・アルバム『Play for Japan』を始めとして、これまでに多くの楽曲が今回の東日本大地震をうけた形で発表されている。しかしこの『White mini Album』という作品は、それらとはまったく異なるベクトルから生まれた作品だ。そこを踏まえた上で、まずはこのアルバムが作られることになった経緯から話したい。
sominica / White Mini Album
1. できあい
2. シャレード
3. Lucky
4. 斜陽作用
5. Hashimotty's Song
6. 無人の駅
価格 : mp3、wav各900円
あの地震が起きた日、橋本は福島県の二本松市にいた。彼はそのほんの数週間前までは東京で生活していた。しかし諸々の事情で祖母が一人で暮らす二本松の実家に戻ることになり、今後の活動はメンバーと遠距離で続けていくことを決めたばかりだった。
震災後、同じく二本松市出身の僕は毎日のように橋本と電話で連絡を取り合っていた。震災直後に話した時の彼は僕よりもはるかに冷静で「二本松はそこまで大きな被害はないよ。ばあちゃんがひとりで住んでたことを思うと、福島に帰ってて本当によかった。じいちゃんが見守ってくれたんだな」と話していた。彼から「ここは被災地じゃないよ」という言葉を聞いて、僕は少し救われる思いがしていた。
その後、二本松市には被爆検査用の施設が置かれた。公共施設は原発付近に住む被災者達の避難場所となり、橋本はそこで手伝いを始めていた。彼から聞いた避難所の状況は、メディアを通して伝わってくるものとはまるで違っていた。電話でのやりとりやブログからも、少しずつ彼が苛立ってきているのが伝わった。
ちょうどその頃にOTOTOYで『Play for Japan』第2弾の制作が決定した。収録曲は新録か未発表という条件を組んでいただけに少し躊躇はしつつも、僕は橋本にも楽曲提供を依頼することにした。彼は喜んで引き受けてくれたのと同時に、それとは別で弾き語りのアルバムも作ると話してきた。
「震災で収入がゼロになっちゃったから、sominica名義で橋本裕弥復興アルバムを作ろうと思って(笑)」
思わず僕は笑い、「それなら思いきり被災者ぶった方がいいよ」などと冗談を交わした。

それから数日経って、まずコンピへの提供曲「まちのくらし Native Fukushiman Version」(『Play for Japan vol.10』に収録)が送られてきた。浪江町から避難所にやってきた子供達との「元気?」「元気!」という会話で始まるこの曲を聴いて、正直僕は動揺せざるを得なかった。彼の歌は明らかに被災地の立場から歌われていた。震災後に生まれた音楽のほとんどが被災地に向けられていたのに対して、二本松にいる橋本はそれとはまったく逆のアングルから歌っていたのだ。
さらに一週間が過ぎて、この6曲入りの弾き語り集が送られてきた。震災後に書いた「できあい」という曲に何度も登場する“春”という言葉。そして“一秒に続く一秒をみんなと共に迎えよう”というラインに込められた想い。「できあい」とは、曲の端々にある彼の手癖等に表れた「出来合い」であり、家族や友人、故郷、そしてこれから生まれてくる新しい命への「溺愛」なのだろう。
「私には“頑張ろうぜ”なんて歌えませんでした。音には感情が現れると言いますが、『White mini Album』というタイトルは平然を装いニュートラルをアウトプットする為のせめてもの強がりです(橋本のブログより抜粋)」
収入がなくなったのも事実だとはいえ、今思えば「橋本裕弥復興アルバム」と銘打っていたのは彼なりの強がりだったのかもしれない。何にせよ、彼はこの時歌わずにはいられなかったのだろう。「できあい」というラヴ・ソングで彼が示した希望を、僕はとても素直に受け取っていた。
一方の橋本は、自分ではもうしばらくこのアルバムは聴けないと言う。「目に見える被害はないけど、みんな目に見えていらついている。復興も何もない。毎日、変わらないんだ」。そう話す彼はひどく疲れているようだった。
今も被災地に向けてたくさんのミュージシャン達が歌っている。でもそれが実際に届くまでには、まだしばらくの時間が必要だ。そんな中でsominicaの橋本裕弥は福島から歌を届けようとした。そう遠くないうちにsominicaが集結してステージに立つ日を願いつつ、僕は出来る限りこの作品がたくさんの人に届けられるように尽力しようと思っている。少なくとも、いま本当に頑張らなければいけないのは、彼ではないと思うんだ。(text by 渡辺裕也)
東日本大地震救済支援コンピレーション・アルバムPlay for Japan
sominicaの「まちのくらし (Native Fukushiman Version)」はVol.10に収録。本シリーズのタイトルには、「日本の未来のために演奏する」という意味を込めています。販売にあたり、クレジット決済手数料約5%と、著作権管理事業者に登録している楽曲に関しては著作権料約7.7%を除いた全ての売り上げを、東日本大地震の義援金として、日本赤十字社を通じて寄付致します。我々の思いが、少しでも被災地に届きますように。みなさん、一緒に、粘り強く、再建と復興をめざして歩んでいきましょう。
■価格 : 各1000円
(Vol.1〜6の6枚まとめ購入は6000円 / Vol.7〜10の4枚まとめ購入は4000円)
■義援金 :
著作権管理事業者に未登録の楽曲 : 95% 義援金 / 約5% クレジット決済手数料
著作権管理事業者に登録済の楽曲 : 87.3% 義援金 / 7.7% 著作権使用料 / 5% クレジット決済手数料
■義援金送付先 : 日本赤十字社
収録曲まとめ版
Vol.1〜Vol.10