「写真って友情っぽいな」って
──では“Ten”については?
大山:“Ten”は特に、精神的な「デカさ」を意識した曲です。サウンド的に派手じゃなくても、ライブで聴いていて心が持っていかれるような。どんな規模の会場でも、聴いた瞬間に広がるような、そういう空気感を目指しました。真行寺のことをあまり考えず、「さあどう歌ってくるかな?」って、勝負を仕掛けるような感覚で作りました。
真行寺:この曲は、最初“バレエの練習をしている女の子”の姿が浮かんだんですよ。先生がカウントしながら教えてるような。それで仮歌詞の段階から数字のカウントだけは決まっていて、そこは最終的にも変えていません。途中から“オーディションを受ける人”のストーリーにして、周囲の実力者たちに気後れしつつも挑む姿を描いていきました。最初に世界が見えてから歌詞を広げていった感じですね。
酒井:サウンドアプローチとしては、とにかくスラップを頑張りました(笑)。弦も変えて、あらゆる手段を尽くして。自分のアイデアだけじゃ辿り着けなかった熱量のあるサウンドになったかな。
──続いて“Say Cheese”はいかがでしょう?
大山:これは制作の後半、アルバム全体について考えていた中で、映画『スタンド・バイ・ミー』を観たんです。あの登場人物のような純粋な心は、僕らは遠い昔のどこかに置いてきてしまったけれど、ああいう“心地よい風が吹く”ようなサウンドにしたいと思ったんです。
酒井:こういうシンプルな構成こそ個性が出やすいし、掘り下げると奥深いんですよ。最終的には楽曲に寄り添ったあったかい感じになりました。
真行寺:この曲は実は、とあるアニメ作品のコンペのために作ったんです。コンペでは「友情」というテーマがあって「よし書くぞ!」と机に向かったんですけど……「やばい、自分、友情について書いたことない!」って気づいて(笑)。友達も少ないし、「友情」って検索したりして(笑)。多分過去にさかのぼっても、自分が「友情」をテーマにガッツリ書いたことはなかったから、チャレンジする価値があると思って。ただ、それでもどうしていいかわからなくて。
──なるほど。
真行寺:その後もずっと“友情”をテーマに何か書けないか探していたんです。それでたまたまその時期に「オールスター合唱バトル」というテレビ番組で、アーティストチームとして合唱をする機会があって。初対面の人同士で、一つの作品を一緒に作り上げるという経験をしたとき、「これって友情に近いな」と感じたんですよね。で、その打ち上げで撮った集合写真がすごく良くて。「写真って友情っぽいな」って思いました。そこから“Say Cheese”というテーマにつながっていきました。「友達できました。写真撮りました。ハイ!チーズ!」みたいなイメージですね。

──“あったかい涙”はどのように作っていったんですか?
真行寺:『DANCEHALL MAGIC』のアルバム制作の頃から、「ハチロク(6/8拍子)の曲が欲しいよね?」って話がずっとあったんです。最初の着想としては、「ちょっとセクシャルで、スイートな曲を作りたい」というものでした。なかなか苦戦しながらようやく曲が形になったんですが、今度は曲が完成したら、「これ、思ってたよりエッチじゃないな」と感じたんです。それで、「もっと人間味のある歌詞を書こう」って方向転換しました。
──それでこういう歌詞になったんですね。
真行寺:楽曲を作っていた11月頃、クインシー・ジョーンズが亡くなったんです。いろいろ彼の曲を聴いていく流れでNetflixのドキュメンタリーを観ていて、「好きな人には、今すぐ“好き”って伝えよう。時間は待ってくれない」というフレーズが心に刺さりました。その言葉にすごく影響を受けて、そこから少しずつ曲の世界観を構築していきました。
